168# おかわりは遠慮して(28話) ページ18
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暑さ厳しい夏のある日。私たち弐年参組は、島外れのキャンプ場へ林間学校に来た。蝉がうるせえ。
お昼ご飯はカレーだ。事前に決まった四班に分かれて作り、出来上がったところから食べ始める。くじ引きで決まったが、私にしては珍しく佐野と違う班だ。豆とは一緒だったんだけどね。
手を合わせ、いただきます。各々スプーンを取った。
「美味っ、」
「材料は用意されたものだし、そりゃそうでしょ」
「Aちゃんの手際も良かったよね。料理慣れてる感じした!」
「うん……実家で作ること多いからかな。家族は仕事や部活で、暇なの私だけだし。……富士、あんまり進んでないけど熱いなら冷ましたら?」
「そしたら美味くないだろうよ」
はむはむ。手作りの昼飯が済んだら片付けに移行する予定。火に近づきにくい富士は、作るときから洗い物担当で固定している。だが、さすがに一人はあれだし、私も入ろう。他は洗った食器を拭く奴、台を拭く奴、使った物を返しに行く奴に分かれる…………が。佐野たち大丈夫?
横目に隣を見ればまだ入道が鍋の前に立っている。他の班員は紅子にモモ、小田原くん、柳田だ。ちなみに事前に布は縛られている。そろそろ食べ始めないと間に合わなくない?
晴明くんも気になって様子を見に来ている。私も行儀は悪いが途中で立ち、紅子たちの方へ。
「おーい、大丈夫?」
「いや……それが。カレーを米にかけたら紫色に変色したんだ、誰か何か盛ったんじゃないかって……」
盛る……? 柳田を見たら得意げな顔をしている。うん、なんか入れてんな。だとしたら、どのタイミングで入れたんだ?
布が言うには「先にカレールーにしこんでおいた」。アンチエイジング効果があるものだから、肌が若返る感じがしないかと聞いてくる。
「ばぶ」
「……おい。桃山さんが肌どころか体ごと若返っちまったぞ」
モモが赤ちゃんになっちゃった。紅子がだっこしてあげる。はー……本当、柳田と違う班でよかったわ。飯もまともに食べれないのか。
カレーどころじゃないのに秦中までやってくる。のんびりしてる時間はない、そこまで来てるらしい。仕方ない。カレーは私や他の班から分けることにしよう。勝手に決めてごめん、いいかな?
そして……柳田は今すぐ解毒剤持ってこい。入道に縄をほどくように言う。……おっと、私も自分のご飯食べなきゃ。あとは佐野たちでできるだろうと思い、食事の席に戻った。
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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時