検索窓
今日:67 hit、昨日:57 hit、合計:1,993 hit

164(23.5話) ページ14





百鬼学園に入る前の私。当時、同級生にいじめを受けていたことを知るのはこの中では佐野だけ。参組の中なら国ちゃんもかな。入学前から親交がある入道も小古曽も鹿島も、神酒すら知らないことである。

昔の私はオドオドしていて、自分の意見もまともに口にできない奴で。周りの顔色ばっかり見てた。教師を呼び捨ての上にタメ口なんて考えられない。

今と随分違うでしょ? 高校デビューと捉えてもらっても構わない。



「Aちゃんにそんな過去が……」

「黙っててごめんね、豆。泥田も紅子も」

「いいって……そんなこと、普通言えねぇだろ」



豆に悲しい顔をさせちゃったな。泥田は『かつての私』に意外な顔をしていた。私にとっては昔のことで、話すのは別に苦ではない。でも、言われる方は違う。大抵は重く捉えてしまう。気軽に相槌できる話題じゃないからだ。

話すタイミングも分からないこともあり、今日に至っただけ。三人を友達だと思ってないとかそういうことじゃないからね?



「A」

「……何、紅子」

「壱年のときに言ったことを覚えているか?」



私は鬼だ。「なんの鬼?」と訊かれたことは数え切れないほどある。頑なに言わないのが逆に怪しいって、新聞部に付きまとわれたことも。

オープンにしなくても騒がしいのは予想外。このままでは事が大きくなる。だって、私……っていうか。家族と付き合いのある他の鬼たちに「俺たちがシメとく?」なんて言われたらさ。さすがに放置できない、やめて。

頭を抱え、ため息ばかりしていた時期がある。そしたら紅子が……


『何者だっていいだろう。AはAだ』


真っ直ぐな目に捕まった。

思考が止まる。紅子は妖怪や鬼としての名称ではなく、周りが騒ぐ前からずっと……私自身を見てくれていたんだ。すごく、嬉しかった。



「うん、もちろん」

「私は今のAしか知らない。別に何も変わらないぞ」

「紅子ならそう言うと思ってた」



思わずぎゅっと抱きつく。わーい。

彼女は「おっと、」と驚いた。私に、歩けないと言ってくる。でも鬱陶しそうにはしないからやめない。そしたら佐野たちに追い抜かれてしまった。戯れてないで行くぞと言われるまでくっついていた。


.


「あ、このことは他の奴には言わないでね」



四人は分からないと思うけど、鬼の界隈はシビアなんだ。

力も知能も高いのにいじめられてた……なんて知られたら、最悪バカにされて笑われる。そういう世界なの。

.

165# それでも、まだ→←163# 君のおかげ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
34人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。