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声とともに、カーテンの影から姿を現したのは柳田だった。

その手には試験管にフラスコ、ビーカー。全てに怪しさ満点の液体が入っている。佐野がちっさい声で「トイレに流したのに……」と言う。



「今度こそ記憶喪失を治す薬を作ったよ!」

「倒れたんだって? 大丈夫か?」



布だけじゃない。入道も来ていて、その後ろには狢と倉も。柳田の好意(くすり)がモモの頭にかかるのを隣で見ていた国ちゃんは、顔色を青くする。

柳田が作ったものなんて信用ならない。それは本当にそう。次に顔を出したのは尾形ツインズだ。良案かのように、その手にはセーラーものの工□本が何冊も積まれている。どこから見つけてきたんや……。

呆れていたら、モモの頭に不気味に笑う花が咲いた。国ちゃんの視界は入道の両手で覆われて見えなくなる。



「女子もいる前で、んなモン持ってくるんじゃねえ!」


「十年早い」

「自分は10代で子作りしたくせに〜」

「なんや、倒れたって聞いたんやけど元気そうやん」



更には弐年の他の教師まで。佐野から、教師には腫れ物扱いされてるって聞いていたけど……。神酒と秦中に加え、ねずみ先生まで様子を見に来るなんて。職員室の中の様子を生徒が知るのは限界がある。神酒は言いながら、目に付いたモモの頭の花を引っこ抜いた。

目で追うのが精一杯、そう思うくらい次々に誰かがやってくる。秦中たちの背中を駆け上がり、頭に登ってきたのは生物部のマンドラゴラたち。



「晴明くん。今朝は生物部に来てくれなかったから、何かあったのかなって思ってたんだけど倒れたって聞いて……。具合悪かったんだね」

「お見舞いに、花が咲いたマンドラゴラ持ってきたよ」

「それ菊の花やんけ。縁起悪いなぁ……」



しかも鉢植えかい。口には出さないが根っこがある鉢植えは「根付く」=病床に「寝付く」を連想させるから。悪気はなくとも、知らずに贈れば傷つけることになりかねない。

せっかく持ってきたのに、と。悪く言う神酒の頭をマシュマロちゃんがペチペチ叩いている。可愛い。その背後には河童や妖精もいた。


尾形たちを追いかける秦中を視線で追えば、いつのまにか大所帯になっていることに気づく。どこに目玉を動かしてもクラスメイトが入ってくる。終いにはたかはし先生も。神酒たちが呼んでくれたのかな?

ふと、雨明くんを見れば。……もう気がかりはないように思えた。心配する必要は無いって分かったらしい。

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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時

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