検索窓
今日:56 hit、昨日:57 hit、合計:1,982 hit

152# ドッペルゲンガー再び(4巻23話) ページ2

▼佐野



チャイムまであと数分。自分の左隣の空席をチラリ見る。

殆どのクラスメイトが登校していて、賑わう教室内。だが椎名はまだ来ていない。座敷すら流石に来ているというのに。弐年になってから頑張っているみたいだけど、たまにこういうことがある。だがまだ猶予はある。



「ん、」

「佐野くん?」

「ごめん豆。スマホ」



制服に入れていたスマホが震えた。豆を両腕で抱っこしていたが、ひとつはスリープ状態の電子機器の方へ。メッセージを受信したらしい。相手は今しがた考えていた奴。『今起きた』……、あー今日は間に合わないな。

ま、でも。壱限目は晴明だった気がする。晴明なら多少遅れても許してくれるだろ。椎名の過眠体質は、トイレなどの生理現象と同じようなもの。この前みたいに午前中に何時間も寝ていたり、もっと前には連休明けに登校できずに眠っていたり。それらと比べたら遅刻なんて大したことない。



「椎名の遅刻決定」

「そっかー。おれたち最近、褒めるの忘れてたもんね」

「え?」

「覚えてない? 新学期始まったばかりの頃、Aちゃん言ってたよ。今年は褒められて伸びるタイプで行くって」(壱6頁参照)



…………言われたらうっすらと、そんなこともあったような? 頭の隅に押し込まれていた記憶が蘇る。最初のうちは豆も「今日で何日連続だね」と言っていたが、いつの間にか聞かなくなった。ていうか俺も、今の今まで忘れていたわ。

思案にふけっていたがチャイムが鳴る。前の引き戸が開く音で現実に戻ってきた。駆け足で入ってきたのは秋雨だった。頬は赤みを帯び、汗をかいている。余程急いできたらしい。椎名に足りないのはこういうところ。そう思ったのは秘密だ。



「秋雨くん、お寝坊かい?」

「ち、違うわい! え〜っと、力ツアゲされてる猫がいたから救ってやったんだよ!」

「へー……偉いね」

「あっ、信じてねーな」



日頃の生活態度や、秋雨自身のこと。どんな奴かよく知っている方からすれば嘘だろうな、豆が言ったことは図星だろうな。咄嗟に出た言い訳なのはすぐに分かる。

まあ、そんなに気にする必要ないよ。まだ来てない奴もいるしさ。教室にはいるんだし、晴明なら怒らn……



「コラッ、チャイム鳴っとるぞ!」



え?

開け放しの扉から入ってきたのは晴明だ。けれど晴明とは思えないことを言い、見たこともない目でこっちを見ていた。

.


□佐野くんは後々「玉緒」呼びしてますが、このときはまだの設定

153→←【151】椎名ちゃんの穴ぼこまとめ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
34人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。