『主人公』と「ヒロイン」【烏野】

「時雨」 ページ19

一日目の合宿も終わって各自の自主練の時間。


私は第2体育館へ向かっていた。


向かう理由なんてたった一つ。


岩泉さんのプレーが見たいから。


「練習付き合います」？


うーんなんて言えばいいんだろうか…


体育館の前で彷徨う。


「あれ、烏野のマネちゃんじゃん、入らねーの？」


うろちょろしていると青葉城西のピンク髪の人ともう1人の人がやってきた。


2人とも確か3年生で岩泉さんとよく一緒にいる。


『あの…青葉城西はマネがいないのでボールだしでもしようかと…』


「まじで！？有難う！入って入って！」


「自分ちのノリで言うなよ笑、有難う。」


ボールだしを口実にすると2人はとても喜んだ表情をする。


ほんとは岩泉さんに会いたいだけなんて言えない…


少しの罪悪感を抱き体育館に入るとそこにはやっぱり変わらない2人の背中があった。


「岩ちゃん今のいい感じじゃん！」


「サンキュー、今の感じでトス頼む。」


「りょーかい！」


やっぱり…変わらない


その事がすごく嬉しくて仕方がない。


しばらくボーと見ているとあちらも気づいたようだ。


「あっマッキーとまっつんとマネちゃんじゃん！どしたの？」


「あー自主練、烏野のマネちゃんがボールだししてくれるって」


「まじかよ！じゃあ2対2やってからにしよーぜ！」


「2対2で体温めてからのスパイク練か！最高だな…」


仲良いなぁ…


「じゃあマネちゃん得点板してくれる？」


『もちろんです！』


得点板の前につきみんなの試合を眺める。


岩泉さん、ピンク髪の人ＶＳ及川さん、もう1人の人


でやるらしい…


ピー


ホイッスルが体育館に響く。


そして及川さんのサーブからスタート


岩泉さんが綺麗にレシーブする。


岩泉さんはいつしか言っていた。


「相手の完璧な1発の拾うレシーブの快感を知れて良かった。」


って。


あの時のあの岩泉さんの表情。


そのひたむきで献上な姿は私が憧れるのに充分すぎる理由だった。


ピンク髪の人円形のトスをあげる。


そして──────


岩泉さんが飛ぶ。


心地よいスパイク音が決まり岩泉さんのチームに点が決まる。


そこからはもう夢中だった。


お互いが互角で取って取られて。


岩泉さんが烏野に居たらこんな感じなのかなぁ…


なんて


気づけば及川さんのチームのマッチポイント。


この1本で勝敗が決まる。

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