【WT】黒い瞳に光を映して (ページ5)

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猫(？) side

メイド「broooock様!!まだ、お仕事が残っています。お戻り下さい!!」

br「帰って来てからやるって〜!!心配しなくても良いもん。」

メイド「broooock様ｯ……!!」

約半年程前、後ろで僕を呼び止める側近のメイドを振り切って家を飛び出した。
家に引きこもって仕事をする日々に変わり映えは無く、そんな日々に飽きていたからだろう。

だからと言って、別に行きたい場所も無ければ、思い出のある場所も特に無い。
なのに、その日の僕は行きたい場所が決まっていた。

br「(う〜ん…ここからじゃ遠いんだよねぇ〜…)」

この都市からかなり、離れた場所にある喫茶店の話。
昔は、治安が悪い場所の店なんて誰が行くんだと言う話だけだったが、若い女の子が接待をしているといきなり噂になった。

娯楽自体、あまり無いこの国ではこんな話なんかしょっちゅうあるハズなのに……
僕はその話を鵜呑みにして、行きたくなったんだ。

今、思えば本当に馬鹿だったと思う。
僕は、身分がかなり高い貴族だ。
あんな場所、1人で行ったら襲われて殺されるかもしれないのに……
結局、その日は何も無かった。
……嫌、起こらなかった。

僕を迷子だと思ったのか、この辺の人達は僕を介護してくれた。
目付きの悪そうなお兄さん、怪我をしている人達など……
正直、何でここは治安が悪いと言われているのか不思議なぐらいだ。

もしくは…彼らは僕を知っていて、媚を売れば自分達が危険な状態になった時、助けてくれるとでも思っていたのか……

もう、何年も命を狙われ過ぎて疑心暗鬼になっていた僕に気づいたのか、本来の目的であった喫茶店の店長さんが僕に声を掛け、飲食を無料で提供してくれた。

店長「ここじゃ、落ち着かねぇーよな??移動しようぜ(笑)」

br「あ…、ありがとうございます…」

……人間ってのは、本当に分からない。
僕達が話をしている後ろで扉に飾られている鈴が、小さな音を出して誰かを招き入れた。

店長「あ、おはよう。早く着替えて彼の接待宜しく〜」

先程まで僕と話していた彼は、その誰かに声を掛けるとこの場を去って行った。

僕は、その光景が面白くて…でも、今は笑ってはいけない気がして、少しだけ苦笑いをした。

『お客様、すみません……』

br「大丈夫だよ〜」

面白かったから。なんて言えるはずも無く、誰かさんは僕への謝罪を終えると店の服に着替えて、此方へと向かって来た。