【WT】黒い瞳に光を映して (ページ34)

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菜箸で卵を掻き混ぜる音が静かに響く中、ユウリさんが気まずそうに口を開く。

yu「あー…俺、別の所で作業して来るッス。」

そう言うと彼はそそくさとその場を離れて行った。

厨房から見える席に座っているきりやん様とアオが楽しそうに会話をしているのと反対に私達は、とても暗い表情でお互い下を向く。

br「……A、昔の約束覚えてる??」

『昔…、というのは半年前の事でしょうか??』

br「ううん、僕等さ……それよりもずっと前に出会ってるんだよ。」

『それは、何かの勘違いでは御座いませんか??』

動かしていた手を止め、broooock様の方を向く。

彼の言う事を否定し続けていたら、悲しい気持ちになるんだろうな…

という想像は当たっていて、今にも泣きそうな顔をしていた。

私達は会っていない。

そう否定し続ける事でこれ以上、無理をして生きて行かなくても良いと思ったから。

好きだったから、君を救える選択をしただけ。

____________今はもう、“好き”って気持ちさえ分からないけどね。

br「……違うよ。」

『たまに居るんですよね…容姿も名も同じ人間が。』

br「A・Aは、この世界で1人だけだよ…!!」

『会った事…あるんです、本当に瓜二つですよ。』

これが普通の人間だったら
　普通の女の子だったら
　何も失ってない人間だったら
　貴族で無かったら
　愛した相手で無かったら
　 “私じゃなかったら”

甘酸っぱい出会いも_______
こんな最悪な再開も_______

きっと、無かったんじゃないかな??

ao「Aちゃ〜ん、そんなに料理するの遅かったっけ………って、何でbroooock泣いてるの!?」

br「……な…、泣いて…ｯなんかないし……!!」

ao「嫌、だって…………ｯ………!!」

最初は動揺してしまう程心配していたが、何があったのか私を見て察したようでbroooock様を連れて席に戻った。

罪悪感の1つや2つ……感じるのが普通だろうが、今の私には何1つ感じる事は無かった。

『さて、ラストスパート…!!』

さっきの出来事でさえ忘れたいのか…今、この瞬間を楽しんでいる自分が居る。

『……最低だよね、私。』

味、大丈夫……かな??
不味くなってなければ良いけど……