少しくらい、俺のこと見てくれてもええんやで？〈3〉【宮治】

そうじゃない ページ33

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Aside





A｢…びっくりした。送ってくれるんだ。｣



治｢そんな驚くことか？｣



A｢だって、モテすぎて女の子の扱い分からなくなってる方かと。ほら、特別扱いしなくて振られるタイプ。｣



治｢完全に侑のことやないかい。あんなんと一緒にすんなや。｣





少しムスッとした治に、思わず笑みがこぼれた。





A｢今日もしっかり自主練まで残ってたし、治、疲れてるんじゃないの？｣





何だか申し訳なくてそう聞いてみれば、
別に、なんて一蹴されて。





治｢こうでもせんとふたりの時間作られへんやろ。まあ、毎日とは行かへんけども。｣



A｢…そんなもん？｣



治｢おん。｣





ちゃんと私との時間を作ろうとしてくれてて、
ああ、彼女なんだな、なんて嬉しくなる。



それに、
これでミッション遂行のチャンスができたかも。






他愛のない会話をしながら私の家へと向かう間
何度も何度も私はタイミングを見計らった。



でも、いざとなったら怖気付いて
伸ばしかけた手を引っ込めて。



傍から見れば
ずっと男子の手元を睨みながら手を出したり引っ込めたりしてる、おかしな女子でしかない。


それにたまに治がその視線に気づき
なんかついとる？、なんて首を傾げる。




……ダメだ、ダメだ。


なんでこんなことで苦戦してるの。



こんなんじゃこの先何もできないじゃん。


ほら、ハグとか、キスとか……



………


キス………？





A｢うわぁぁぁぁあ！！！？｣



治｢は！？なんやねん、ほんまに！！｣



A｢いや、なんでもない！！｣



治｢いきなり奇声発してなんでもないわけないやろ……｣





自爆ともいえる妄想で
沸騰しかけた頭を必死に落ち着かせた。


こちらに向いた治の怪しむ顔は、手のひらで押して無理やり前へ。




改めて手を繋ぐタイミングを図ることに集中する。




…たぶん、これはあれだよ、思いきり。


結局はそれがないとどうにもならないし。



よし、3秒後ね。



もう知らない。


どうにでもなれ。




そんな半ば開き直った感覚で、心の中で3つ数えて。


思い切って手を伸ばした。





────ぐいっ。





治｢えっ、｣



A｢…あ。｣





確かな手の中の感覚。


……でも。





治｢えっと…？｣





驚く治に、焦る私。





私が手を伸ばしたのは、
治がちょうど不意に腕を上げたときで。



それを謎に阻止する
なんて状況を作り出してしまった。





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