帰り際の彼女 ページ20
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治side
侑「……ありえへん。」
治「俺も最初はそう思ったけどな、事実やね──」
侑「それ絶対違うで、治!!あの時のあいつが、本物や!!」
治「はあ?お前何言うて……」
あの時のって、いつの事言うてるか分からんし。
治「直接言われてなくとも、本人が言うてたんやから認めるしかないやろ。」
侑「本心やないかも知れへんやろ!!勝手に決めつけんなや、ドアホ!!」
訳が分からん。
なんで当事者の俺が受け止めとるのに、外野の侑がこんな騒いでんねん。
てか、暴言吐かれる筋合いもないし。
いよいよ頭に血が登り、思わず声を荒らげてしまう。
治「〜〜っ、なんやねん、お前も角名も!!Aの肩ばっか持つ理由がどこにあんねん……!」
侑「お前がちゃんとAのこと見てへんからやろが!!」
治「どう見てへんのか言うてみろや!!」
侑「なんで教えなあかんねん!自分で考えろやこのボンクラ!!」
治「お前にそんなこと言われなあかんねん!!」
鋭い眼光を向けてくる片割れに対抗して
俺も思い切り目の前の顔を睨みつける。
キッチンの方からは
喧嘩するなら外でしろ、とおかんの声。
侑「だいたい、普通に考えりゃ、あいつがそんな器用なわけないやろ。」
治「……」
……それは、そうやけども。
マネージャーの仕事なんかはテキパキするくせに、自分のことになると急に不器用になる。
侑のひと言に悔しくも納得していると、
脳裏を過ったのは帰り際のAの姿だった。
帰ろうとする俺を引き止めるように、制服の裾を掴んできた彼女。
また媚でも売ってきたのかと振り返ってみれば、
そんなのとはかけ離れた、切なそうで、苦しそうなAの表情があって。
瞳が、零れるのを耐えるように揺れていた。
……あの時、Aはなんで俺を引き止めた……?
記憶の一部として受け流そうとしていた場面が、ひとつの問いを俺に投げかけてくる。
治「……わかるか、んなこと。」
考えても考えても、その答えが出ることはなかった。
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名無し86757号(プロフ) - いつかのイラストを描いていた者です。2年ぶりに最初から読みましたが本当に素敵な作品でずっときゅんきゅんしています。いつまでも待ってますのでこの素敵な恋を素敵な形で完結していただきたいです。 (9月5日 21時) (レス) id: 717f7bf83d (このIDを非表示/違反報告)
_zh(プロフ) - 面白い作品ほど作者が失踪するジンクスを実感しています。いつか戻ってきてくれるという淡い期待を持ちながらお気に入り登録しますね。 (8月30日 21時) (レス) @page43 id: d3a24f0cd7 (このIDを非表示/違反報告)
カービイ - ぼ、僕も!!!お話すごくおもしろかったので更新待ってますね。頑張ってください!!! (2022年8月5日 21時) (レス) @page39 id: 16e8e39b36 (このIDを非表示/違反報告)
サリア - 続き待ってます (2022年8月3日 4時) (レス) @page39 id: cceeb02c56 (このIDを非表示/違反報告)
サリア - 涙線崩壊してまった,,,この作品好き過ぎる (2022年8月3日 3時) (レス) @page29 id: cceeb02c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らな。 | 作成日時:2021年2月13日 0時