白濱くんが呼び捨てをしない理由。【3】

届かない質問 ページ33

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亜嵐side





夕日が教室全体をオレンジ色に染めてる。



1歩踏み出せば
俺の足元もそのオレンジ色の1部になった。





美月【あ、A？さっき教室で寝てたよ。たぶん他の人も帰ってるだろうから、起こしてあげて？】





教室に向かう途中に会った美月ちゃんの言う通り。



静まり返る教室の中
ひとりで机に突っ伏している、制服姿のAちゃんを
簡単に見つけることができた。





窓際の席で微動だにしない彼女に静かに近づく。



顔を軽く覗き込んで確認すれば
その瞼は閉じていて、小さな寝息が耳に届いて。





亜嵐「…気持ちよさそうに寝るにも程があるでしょ。」





ふっ、と小さく笑うと
音をなるべく立てないようにしながら
俺はAちゃんの前の席に座った。



昼間見た時に纏められていた髪は解かれ
夕日にあたって輝いてる。



まつ毛なが
女子ってこんなもんなの？



なんて、彼女の寝顔を見ながら思ったり。





あまりに気持ちよさそうに寝てるから、
起こすのに躊躇ってしまって。



それを言い訳に
まだ眠る彼女を眺めてたい自分もいて。





……あと10分。



10分待って起きなかったら、起こすことにしよう。




そう、心の中で決めた。





それから10分間
スマホいじったり、校庭を眺めたり。



そんなことして再びAちゃんに視線を戻した時
彼女の腕の下に何かがあることに俺は気がついた。




9月の予定が少し見えて、それがスケジュール帳だと分かる。



そのスケジュール帳のページから
何かがはみ出ているのが目にとまって。



紙より少し厚手で、光沢感のある何か。





亜嵐「写真……？」





何となく気になった俺は
彼女の腕の下からそれを抜き取ってみた。





亜嵐「……え。」





手に取ったその写真に写っていたのは
楽しそうに笑う、彼女と自分の姿。




背景と服装からして、多分部活中の写真だった。





亜嵐「……なんで、こんなの、スケジュール帳なんかに挟んでんの。」





予想外の出来事に勝手に高鳴る胸。



嬉しい、なんて素直に思ってる自分がいる。





亜嵐「…そんなことされたら、期待するよ？…俺。」





……大事にしてんのかな、って誤解するじゃん。





すっ、と夕日で輝いてる彼女の髪を少し掬いとる。





亜嵐「……俺の事、どう思ってんの…？」





届くわけない質問を呟きながら
掬いとったその髪に、静かにキスを落とした。






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