白濱くんが呼び捨てをしない理由。【3】

言い訳と昨日の彼女 ページ22

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Aside





次の日の朝。





「あ、Aちゃん！」





眠い目をこすりながら電車に揺られていると
どこからがわたしを呼ぶ声がした。



周りを見渡せば
人混みをかき分けるように近づいてくる白濱くんがいて。




おかしい。


朝練のために乗るこの時間の電車で
白濱くんに会ったことは1度もない。





A「白濱くんいつもこの便だっけ？」



亜嵐「ううん、今日日直だから。うちの担任いろいろ仕事押し付けてくるから、早めに行っとこうと思って。」



A「そうなんだ。」



亜嵐「あ！昨日、さっさと先帰ったでしょ！」





う。


やっぱり言われるか。



…でも、でもさ！





A「…先帰ったというか、もともと一緒に帰るなんて約束してないじゃん。たまたま帰りが一緒になるから帰ってただけで。」



亜嵐「それはそうだけど…」





ちょっと俺が遅れても待っててくれたりしたじゃん、なんてブツブツ言ってる。




その通り。


いつもの私だったら多分
白濱くんが出てくるまで待ってたと思う。

そんなことするくらい
白濱くんと一緒に帰るのが当たり前になってた。




電車を降りてからも
ふくれっ面でこちらを見てくる白濱くん。


この調子だと
昨日の私の様子にもなんの違和感も感じて無さそうだ。



たまらなくなった私は





A「見たいテレビがあったの！勝手に帰ってごめんって。」





そう、適当な言い訳をした。





亜嵐「今日は見たいテレビあるの？」



A「ないけど。」



亜嵐「じゃあ、今日こそ一緒に帰ろ。俺、いろいろ話そうと思って話題溜めてんだよね。」



A「へぇ。」





どうでも良さそうな反応をしてしまった。



…昨日の今日で、何の話題を出すつもりだろう。





A「……昨日助けた女の子の話ならもういいからね。」



亜嵐「え？」



A「…っ！」





しまった、と思った。



ポロッと出てしまった本音に
白濱くんは不思議そうな顔をして。


しかも、嫌味な言い方。



内心慌てる私のこと
白濱くんはじっと見つめて。





亜嵐「…Aちゃん、なんかあった？」



A「いや、これは…」





どう言おうか困り果てた、その時。





「…し、白濱くん！」





突然の、彼を呼ぶ声がした。



声がした方に視線を見せてみれば
私たちが歩いていた道の前方に、ひとりの女の子。




すぐに分かった。



昨日、白濱くんが助けた子だって。






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