白濱くんが呼び捨てをしない理由。【2】

らしくない ページ8

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亜嵐side






Aちゃんを送ったあと、俺も自分の家に帰った。



部屋の中に入ると、適当にカバンを床に放り、
身体はベッドの上へ。


制服にシワがつくなんて、今はどうでもよくて。





目元を腕で覆いながら、ため息をひとつ。





亜嵐｢……らしくないな。｣





自分で呟いておきながら、誰に対して言ってるんだろうか。



訳の分からないひとりごとに、またため息が漏れた。





……頭の中に浮かんでくるのは、さっきのAちゃんの姿。



クリスマスイブに会った時は、
必死に人目を避けるようにして泣き顔を隠していた。


俺がその顔を見たのは、ほんとに偶然のこと。




………だけど。




今日彼女が泣いたのは、俺の顔を確認してから。



“…安心……しただけ……”





脳裏に響く、彼女の言葉。





…………一体、どの意味で言ったんだろう？





“不審者かと思ったら知り合いで、安心した”



………それとも



“…来たのが、他の誰でもなく、俺だったから安心した”




その言葉の前にはどんな説明が加わるのだろうか。





亜嵐｢……｣





……Aちゃんのことだから、
きっと、前者だろうな。



だけど、後者の可能性を考えてる自分もいて、
何自惚れてんだって、我ながら呆れる。






抱きしめたのは、
Aちゃんを見て、抱きしめたいという衝動に駆られたからだった。



こんなこと、誰にでも思うことじゃない。





……きっと、Aちゃんだったからこそのこと。




……じゃあ、なんでAちゃんに対してだけそんなことを思った？





亜嵐｢………わけわかんねぇ……｣





………らしくないんだよ。




俺の前で涙を流したAちゃんも



Aちゃんのことを抱きしめた、俺も。






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