好き。…嘘、大好き。〜after story〜[佐野玲於]

私の大好きな人 ページ2

.





待ち合わせ場所でスマホをいじってると、
話しかけてきた知らない男の人。


ご飯でも…って典型的なお誘いをやんわり断るんだけど、なかなか立ち去らないからどうしようかと困っていたところだった。




玲於｢…A。｣




聞き慣れた声。


声がした方を振り返らなくても、すぐに誰だか分かった。


まあ、それでも
振り返らないわけにはいかないから、彼の方を振り返って。




A｢れ……っ、！｣




玲於くん！
そう声を上げかけて、咄嗟に自分の口を塞いだ。


こんな所で名前を呼んで、勘づかれたらまずいから。




｢…え、なに、この人が待ち人？｣




見知らぬ男の人は、鼻で笑うような勢いでそう聞いてくる。



きっと、玲於くんがマスクにキャップという完全防備だから、
冴えない男にでも見えたんだろう。





…残念ですね。


あなたなんかより何百倍もイケメンなんですよ。





そんな気持ちを込めて男の人を見つめると、
ぐいっと引かれた右腕。



犯人は玲於くんで、
私はいとも簡単に玲於くんの隣に引き寄せられて。




それを見せられた男の人は
チッ、と舌打ちをして今度はあっけなく立ち去っていった。



その男の背中を見送っていると、
隣から呆れたようなため息が聞こえてくる。




玲於｢ナンパされるなんて、ちょっと生意気なんじゃねぇの？｣


A｢は？｣


玲於｢Aには100年早いわ。｣


A｢なにそれ！元はと言えば玲於くんが遅れるのが悪いんじゃん。｣


玲於｢隼たちにからかわれてたんだよ。ていうか、早く行こ、飯。腹減った。｣




私の文句はスルーして、歩き始めた玲於くん。


少し腑に落ちない気分で玲於の斜め後ろを歩けば、
突然手を引かれて玲於くんの隣へ。




玲於｢…なんでそんな後ろなの。｣


A｢え、だって、バレたら…｣


玲於｢バレないためにあんな人気の少ないところ待ち合わせにして、こんな人気の少ない道歩いてんだろ。｣




そう言って、掴んでいた私の手ごと自分のポケットへ突っ込んだ。


そこ行動に少しだけ驚いて、じっとポケットを見つめれば




玲於｢…ナンパ防止。｣




なんて、そっぽ向きながら呟く。



何だかおかしくて、私は小さく笑った。




ナンパについてあんなに文句言ってたのも
こうやっていつもはしないことしてくるのも
きっと、ヤキモチが原因。





そんな、ヤキモチ妬きでたまに可愛いところを見せてくる彼は、私の大好きな人。





.

急な宣言→←先約

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す