好き。…嘘、大好き。〜after story〜[佐野玲於]

ごめんなさい ページ25

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Aside




｢これはひどいなぁ。｣




右手の幹部を見ながら、病院の先生は呟いた。


ライブ後、スタッフさんが見つけてくれて
やって来た病院。


そこで診察を受けた私は、ヒビ入ってるかもって
レントゲンまで撮るハメに。




私が落ちたのは、まあまあの高さステージ。


その時咄嗟に出した手の付き方が悪かったらしく、
私の右手首は見事な程に膨れ上がっていた。



ライブ中はアドレナリンが出てたらしく
全く気にならなかったのに、
今はジンジンと響くような痛みに顔が歪む。




しばらくしてレントゲンの写真を持ってきた先生。


写し出された幹部を示しながら
どうやらヒビは入ってないらしいことを説明してくれた。




医師｢捻挫、ってとこだね。｣


A｢捻挫なら、1週間くらいで治りますよね？｣




大人しくしていれば痛みは3日くらいで治まってくれるだろう。


多少の痛みは大丈夫だろうから、すぐライブに出させてもらって……




なんて、計画を立てている私の隣で、先生は少し難しい顔。





医｢……1週間では、痛みは引いてくれないと思う。｣


A｢…え？どうしてですか？｣


医｢これ、捻挫の中でも1番ひどいよ。治るのは3週間くらいかかるなぁ、きっと。｣


A｢そんな……｣




落ち込む私を他所に、
安静にしてくださいね、って言われながら湿布が貼られる。


自分で貼る用のものももらって、病院を出た。







A｢はぁ……｣




病院からホテルはすごく近くて、徒歩で数分の距離。


歩いている間、ため息ばかりが出てしまう。




…だって、怪我人の代理でライブに参加したのに、結局自分も怪我するなんて。


私が落ちた時の
近くにいたお客さん達の悲鳴、まだ耳に残ってる。



あと一週間くらいでライブも終わるし、なんとか最後までパフォーマンスしたいんだけどな……






ホテルの目の前の交差点に差し掛かった時、
ホテルの入口に立ってる人影が目に入った。


顔がはっきりしてくると、
あちらも私のことをしっかりと捉えて。




｢……Aさん。｣




立っていたのは、玲於くんファンの2個年下の女の子だった。


…ライブ前、玲於くんのサインを欲しがった子。




1度だけ、彼女の視線が私の手元に落ちる。



こんなところでどうしたの？って聞けば
急に目を潤ませて。




｢ごめん、なさい………！｣




声を震わせながらそう伝えてきた。






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