駑馬に陽光 ページ13
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「で？ 解決したわけ？」
「おかげさまで……その節はお世話になりました」
月島が向かい側の椅子を引きながら、意地悪そうな顔をした。私は一生こいつに頭が上がらないかもしれない。
数日後、私はまた月島に呼び出されていた。彼のお気に入りだという喫茶店は知る人ぞ知る名店という印象で、なんだか月島らしい。練習が長引きでもしたのか少し遅れてはいたが、今度はきちんと現れた彼を見てそんなことを思う。彼の額には薄っすらと汗が浮かんでいた。
「自信がないとかどうとか言ってたのはどうなったのさ」
「うーん……自信は、今でもあんまり無いかも。でも、なんか、それは別にいいかなって」
日向の全てはバレーボールを基準に回っている。彼が愛する世界を、最後まで同じように愛すべきだと思っていた。彼と二人で歩むからには。
でも、別に隣を歩く必要はなかった。私と彼は違う。どれだけくっついて空間を、空気を共有しようが、どうしたって私たちの境界線は消えてなくならない。言ってしまえば、ズレは必然なのだ。けれど、それがどうした。
「追いつけるように頑張ろうって、そう思って。自信なんかいらないって言ってくれたし」
「へえ」
「大丈夫、一番怖いのは日向を忘れちゃうことだって分かったから、やれるよ」
それ以外なーんにも怖いことなんて無いよ、と笑えた。もしかしたら、私が本当の意味で日向の隣に立てることは一生無いのかもしれない。それでも、私は彼の後方を走るのだ。
「ふーん」
自分が聞いたくせに、あまり興味のなさそうな相づちだった。でも、なんだかんだでほっとしてくれているのだろうな。口調からそれが少しにじみ出ていた。頭の中で、今度改めてお礼をする算段を立てる。
気持ちが透けたのが恥ずかしかったのか、月島が一層ぶっきらぼうな仕草で私の手元のカップを指差す。
「コーヒー、苦手なんじゃなかったの」
「ああ、これ？ 最近飲むようになったの。苦いんだけどさ、ちょっと美味しさに気づいた」
「なるほど？」
あの子供舌がねえ、とでも言いたげな視線だった。自分も甘いお酒しか飲めないくせに、と言おうとしたけれど、飲めないんじゃなくて飲まないんだと言われそうだからやめておこう。
日向はもう少しこっちにいると言っていた。今度、みんなで飲むのも楽しいかもしれない。そんなことに思いを馳せながら飲んだコーヒーは、相変わらず苦いけれど案外さっぱりとして飲みやすい。
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さかき(プロフ) - 莉葵さん» ありがとうございます！次の作品もぜひ読んでやってください〜 (2020年5月31日 12時) (
レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - 追記.応援してます！新作できたら、教えてくださいね(^^)日向愛が溢れちゃってます汗 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - すごく良いお話でした！感動しました！日向を見る目が少し変わった気がします笑 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - Ria*さん» 励みになります、ありがとうございます！日向いいですよね… (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 依さん» 依さんありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです！こちらこそまた読んでやってくださいな！！ (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2020年5月29日 16時
