どうか呪われますように！【及川徹】 (ページ1)

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春雷ページ1

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　はじめて彼を見た時、ああ、綺麗だと思った。絵画や宝石を見た時のように、ごく自然に。
　入学式の時点で周囲を騒がせていたかんばせは勿論のこと、こう、柔らかい物腰とか、しゃんと伸びた背筋とか、全部全部ひっくるめて。及川徹は、絵にかいたような美しい人だった。

　だから、私がとった一連の行動について、下心ではないかと問われると素直に認めるしかなくなる。単純に興味が湧いたのだ、及川徹という人間に。

　彼はバレー部に入部するのだと聞いた。詳しく聞けば、最初からそのつもりで強豪である北川第一中学校から進学してきたのだという。そして、北一のバレー部はほぼこの青葉城西に進学するのだとも。

　及川くんとバレーはすぐには結び付かなかった。身長は高いし体つきも案外がっしりしているし、何かしらスポーツをしているんだろうなというイメージはあったけれど、具体的に何の種目か特定しようとするとその空想はすぐに霧散してしまうのだ。なんというか、彼が汗を流して必死に、泥臭く何かをしているところを想像できなかった。作り物のような綺麗な笑顔から連想するのは――。

　そこまで考えて、私ははたと気付く。なにも思い浮かばない。私が入学から数日、ただのクラスメイトとして知った彼に似合うのは、ただただ温度のない笑みを浮かべていることだけだ。

　そんな彼が、因縁のライバル打倒を掲げて部活に励む。時に地を這ってボールを追う。そんなの、興味の一つや二つくらい持つだろう。

　ただ、私が特異だったのは、きっとそれを興味で完結させなかった点だ。思い立ったが吉日と、私は体験入部の一日もせずにすぐに入部届を出した。溝口くんことコーチは驚いた顔をしていた。及川くんが気になって仕方がなくて、と理由を話すともっと驚いた顔をした。さらに言えば微妙な顔もされた。

　加えて正直に言うならば、私はバレーボールにさしたる興味を持っていたわけではない。たまにテレビで試合を見かけて、授業でやったことがあって、その程度だ。だから、仕事を教えてくれる先輩方に入部の理由を問われれば、馬鹿正直に及川くんと答えていた。

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