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治くんが、このごろおかしい。このごろ、というより、もうずっと。
「侑くん、どうなってんの」
「俺に聞かれてもわかれへんわ」
ぐだっと机に伏せて、侑くんを見上げる。彼はバレー雑誌を読みながら、一応という風に私の話に耳を傾けていた。
初めてバレー部の試合を見に行った日。あれから公式非公式を問わず、試合がある時は必ず侑くんに誘われる。今なら、角名くんの「侑は治に甘い」の意味が解る。多分、こういうことだ。
それはいいのだ。あれ以来私はバレー観戦の楽しさに目覚めてしまったから。問題は試合後だ。
あの日、治くんを私を抱きしめて、私がかっこよかったよと言うと腕をほどいた。その後、飯食って午後練ある、とふらふらと体育館に戻ってしまった。私は暫くぽかんとして、その場から動けなかった。
それが、彼のルーティーンになってしまったらしい。試合後、治くんが必ず私を連れだして、抱きしめられたらと思ったら「俺、かっこよかった？」と聞く。最近はたまに試合の感想も。それが当たり前のように、一連の動作はスムーズだ。
私が格好良かったよ、というと、満足したように腕をほどく。それ以上何も言わない。ずっとそんなことが続いていて、あまりにも真意が読めないから、無理やり腕を振り払うこともできなかった。私はただ硬直している。
正確には一度、試合が終了してすぐに帰ろうとしたことがあったのだが、ミーティング前の治くんに偶然にもロビーで遭遇してしまった。相変らず鬼ごっこでは彼に勝てない。何か言われるかな、と掴まれた腕をじっと睨みつけていた私に、治くんは抱きしめてお決まりの質問をするだけだった。ますます意味が分からない。
「奇行すぎない？ 全然意味わからないんだけど」
「まー、あの、あれやな」
うわの空で返事を返そうとしている人特有の、意味のない言葉の羅列。それを数回繰り返して、侑くんは言った。
「治のやつ、いっぺん食いたい思うたら食うまで止まらへんからなあ」
「……え、なにそれ怖い」
思わず上体を起こす。
「前にも言うたやん、あいつの食への執念は恐ろしいで」
「あー、うん。だから、治くんが追ってるのは恋心なんかじゃなくて執着だと、最近は思わないこともないんだけど」
「好き」という言葉を聞くことは、全くと言っていいほどなくなった。季節はすでに秋だ。侑くんはスポーツ推薦を貰っているみたいで気楽にしているけれど、周りは受験シーズン一色だった。
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか？あるようでしたらボード？にお願いします (2019年9月19日 7時) (
レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…（ ; ; ）本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー！好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです！治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです！ (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ！！！めっちゃくちゃ好きです！！！番外編も嬉しいですありがとうございます！！治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです！満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください！お粗末さまでした！ (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2019年8月9日 17時
