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「治くん! 好きだよ! あ、間違えたお早う!」
「おう、はよ……ほんまどこからでも出てくるんやな」
「そこに治くんがいるならね!」
パチンとはなったウィンクは、あくび一つで見事にスルーされてしまった。相変わらずマイペースだ。多分、「眠い」とか「腹減った」とか、考えているのはそのあたりだろう。くそぅ、そんなところも好きだ。
あっ、またあくびした。朝の治くん可愛いな……。
治くんは普段から快活とはいいがたいけれど、ここまで眠そうにしているのはレアだ。早起きは三文の徳、だなんていった先人に初めて心の底から同意した。
「うわっ、Aやん。なにしとるん、そんなところで」
「あ、侑くん。普通に待ち伏せだけど」
「お前の頭ん中では待ち伏せは普通なん? こわっ」
「何とでもいえばいいさ! 朝一番におはようと好きを言いたい私からしたら合理的な行動なのだよワトソンくん!」
「あかん気ぃ狂っとるわこのホームズ」
そんなことを言いながらも、侑くんはにやけを押さえきれていない。彼は最初から私のことを面白がっている。コントか何かと思っているんだろうか。私、真剣なんだけどな。
「そろそろ朝練始まっちゃうよね。じゃ、私これから教室でひと眠りするから」
そう、私は帰宅部にもかかわらず運動部の朝練の時間に合わせて登校している。流石に毎日じゃないけどね。いつもならベッドの中で丸くなっている時間だから、眠くてたまらないのだ。
「好きだよ治くん! 朝練頑張ってね!」
「んー……悪いけど、俺は好きじゃないで」
申し訳なさそうに下げられた眉。私は一瞬言葉に詰まってから、口を開く。
「知ってるよ! あ、ついでに侑くんも頑張れ!」
俺はおまけか! と治くんとは対照的に元気な声を聞き流しながら、教室に向かって走る。残念、私はきみのそういうところも大好きだ!
初対面で求婚というとち狂ったことをしでかし、それから毎日のように告白をしてくる変な女だ、私は。自覚はある。なのに毎回律義に断ってくれるから、ますます好きになってしまう。
ああ、口元がくすぐったい。好きだー! と叫びたい気持ちでいっぱいだ。諦めるという言葉は私の辞書に載っていない。叩くなら折れるまで、告白するなら言葉が尽きるまでだ!
一気に階段を上る。勢いよく教室の扉を開けようとして――
「……嘘でしょ」
どうやら私は早く登校しすぎたらしい。
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか?あるようでしたらボード?にお願いします (2019年9月19日 7時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…( ; ; )本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー!好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです!治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです! (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ!!!めっちゃくちゃ好きです!!!番外編も嬉しいですありがとうございます!!治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです!満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください!お粗末さまでした! (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年8月9日 17時