初対面プロポーズ女の苦難【宮治】

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「由々しき事態であります」

「Aが由々しきとか言うとる、ウケる」

「そこ！ うるさいよ！」

「で、何？ 不審人物がいると思ったら柱の陰に引っ張り込まれて、そうこうしてたらここに連れてこられてたんだけど」

「うんそれはごめん！」

　けらけら笑っている侑くんと、相変らず何を考えているか分からない角名くん。侑くんは自席に、角名くんは侑くんの隣の席をお借りして座ってもらっている。そして、私は二人の前で仁王立ちだ。

　どうしてこんなことをしているかというと、それは数分前にさかのぼる。

　お昼休み、私は食堂でお昼を済ませた後、治くんの教室に向かっていた。手には治くんがよく飲んでいるジュース。手土産みたいなものだ。

　浮かれ気分で治くんに声をかけようとして、慌てて柱の陰に隠れる。なんだ、私は幻を見ているのか。現実逃避をしながら目をこするも、まぎれもない現実だ。

「なーにしてんの」

「うわぁっ！？ なんだおスナか、驚かさないでよ」

「色気のない悲鳴。なに、探偵ごっこ？」

　あながち間違ってない、と言いながら裾を引っ張って柱の陰に引きずりこむ。何しろ角名くんは大きいから目立つのだ。二人して、ブレーメンの音楽隊よろしく顔を覗かせる。

「お、治くんが女の子と談笑してらっしゃるんですが……？」

「え？ あー、ほんとだ」

　視線の先には見慣れた銀色の頭と、見慣れない真っ黒なポニーテール。くっ、しかもよく見ると大変スタイルがよろしい。

　治だって女子と話すことくらいあるでしょ、と頭上から正論が降ってくる。その通りだけどそうじゃないんだよ。心なしか、治くんの表情が少し柔らかい。あれは、例えばバレー部の面々とか、一定以上気を許してないと見せてもらえない顔だ。

「なにしとるん？」

「あっ、角名ー！」

　治くんと女の子に見つかってしまった。女の子は角名くんとも仲がいいのか、ブンブンと手を振っている。その度にポニーテールが揺れていて、快活そうな子だった。

「な、なんでもございません！ 失礼します！」

　咄嗟に角名くんの手を引いて走り出す。行先は勿論、彼の片割れがいる自分のクラスだ。

「侑くーん！」

「うっさい、声デカいねん自分」

「ごめん！ でもちょっと！ 話聞いてえええ！」

　そして、今の状況に至る。手には未だペットボトルが握られていて、少しぬるくなったその温度を主張していた。

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