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「好きでもないやつにしては意識しすぎや」
廊下ではあからさまにこちらに視線をやらないようにしたり、抱きしめられる時には緊張して身体を硬くしたり、そもそも腕を振りほどかないし――すらすらと並べられる言葉に、私は何一つ反論出来ない。
「それに、角名と侑からだいたい聞いとったし」
「嘘ぉ……」
信じてたのに。脳内で狐の耳が生えた二人がダブルピースをかましてきたから、とりあえず殴った。じゃあ、私のこじらせすぎた愚痴は全部本人まで伝わっていたのか。
「まあ、二人にも協力してもろうて作戦成功してよかったわ」
作戦、とオウム返しに聞き返す。治くんはせや、と得意げに笑った。
「お前に意識され続ける作戦」
……思い当たる節があった。まさか、と声が震える。
「たまにお昼に誘ってたのも、めちゃくちゃ低い頻度で好きって言ってたのも、言わなくなったと思ったら試合後に必ず抱きしめてきたのも」
「察しがよくて助かるわ。全部お前を意識させるためやけど?」
それが何か?みたいな顔で、そう言う。やっと合点がいった。そういう事か。
治くん曰く、なんで卒業まで待たなあかんねんあほらしいと思っていたらしい。口が悪い。でも、私が頑なだった。付き合うとしたら絶対に約束通りでしか納得しないだろうから、せいぜいそれまで他の男なんて見られないように弄んでやろうと。
「待って、それって私と治くんが結果的にくっつく前提じゃない?そうじゃないと悲惨だよ?」
「そうなろうとしとるやろ、結果オーライや」
適当か。果たして私は、そんな作戦に貴重な二年間をなげうつに値するような相手だったんだろうか。
そういえば侑くんが言っていた、治くんは一度食べたいと思ったら食べるまで止まらないのだと。あれ、これもしかして治くんも結構めんどくさい?
「で、どうするん?返事まだ聴いてへんけど」
顔を覗き込む治くんに、ぐっと息を飲む。覚悟を決めて、小さく思いを言葉にした。
「……よろしく、お願いします。ほら、治くんも結構めんどくさいらしいから、めんどくさい私でも釣り合うかなーなんて思ったり……」
尻すぼみになる言い訳。恐る恐る治くんと目線を合わせると、彼は見たこともないような喜色満面の顔をしていた。
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか?あるようでしたらボード?にお願いします (2019年9月19日 7時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…( ; ; )本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー!好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです!治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです! (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ!!!めっちゃくちゃ好きです!!!番外編も嬉しいですありがとうございます!!治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです!満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください!お粗末さまでした! (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年8月9日 17時