初対面プロポーズ女の苦難【宮治】

プロローグ ページ1

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　最初の印象は大きいなぁ、位のもので。何なら、彼を見つけたのも周りから頭一つ抜きんでて背が高かっただけのことだ。けれどそれは、すぐに覆されることになる。


　ここは稲荷崎高校。入学式が終わり、賑やかな喧騒の中で、彼は一人桜の大木の下に佇んでいた。誰かを待っているのか、時折腕時計を気にしながらぼんやりと舞い落ちる花びらを目で追っている。


　単純に綺麗な顔をしていると思った。言うなれば鑑賞モードで、テレビ越しで見るアイドルを可愛いな、かっこいいなと感じるのと同じ。それ以上でもそれ以下でもない。


　「それ以上」になってしまったのは、彼と目が合ったからだ。眠たげな眼が、不思議そうに細められる。まずい、流石にじろじろと見つめてしまった、逸らさねばと思うのに、不思議と体が動かない。


　流石に不審に思ったのだろう、「……俺？」と自分の顔を指しながら、口パクで。背中を押すように風が吹いた気がしたけれど、気のせいかもしれない。とにかく、先程までの身体の重さが嘘のように、私は走り出していた。


　急ブレーキをかけて、ぱちくりさせている目をしっかりと見据える。息を吸い込んで――


「初めまして！ 結婚してください！」

「……は？」

「あっ申し遅れました！ 私守屋Aと言います！ 結婚してください！」

「いやなんで二回言ったん？」


　これが私の華々しい、ではなく毒々しい高校生デビューである。

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