笑う ページ38
「……これは、俺の不注意で起こってしまったことです。全部俺が悪いんです。」
「でも、全部何とかしますから……床もちゃんと掃除します、
血が出るのも……すぐに治します。なので、」
「……お、れは、大丈夫なので……
このこと、だれにも、いわないで……
これは、全部俺一人でなんとかしますから、お願いします……」
そう言うと、少年は顔を伏せ、俺の着物の裾を掴んだ。
ぎゅ、と握りしめた拳が静かに震えていた。
……改めて部屋を見渡す。
床に散らばる破片、うどんかなにかだったと思われる食事、夥しく広がる血。
少年の口から血が出ていることを見るに、吐血をしてしまったことは明らか。
そして、使用した形跡のある台所と、机に置かれたもう一つのうどん……
時透がいないことから、きっとこの料理を作ったのは彼自身だ。
……きっと、朝餉に時透と自分の分の料理を作っていた所だったのだろう。
完成した、というときに体調が悪くなり、床に座り込んでしまった。
その拍子に片方の器が落ち、割れてしまったのだ。
そして、咳き込んでいる内に突然、吐血した…… と。そこまでは分かった。
……だがこの年の子供なら、血を吐いた、だなんてなれば、
何も考えず大人に助けを求めに行くのが普通だろう。
なのに、全部自分が悪い、なんとかするから周りには言うな、だなんて口止めをするなんて。
「一つだけ、教えてくれ」
渦巻く思考を確信に近付けるため、俺は静かに問いかける。
「こうなったのは……初めてじゃないのか？」
「！」
「そう、ですね。流石にここまで酷いのは初めてですけれど。」
以前にも吐血の経験はある。
多分、さっき少年が吐血を誤魔化そうとしていたのも、これが原因にありそうだ。
「そうか……」
「なら、それを、他の誰かに言ったことはあるか？
自分一人ではなく、誰かに打ち明けたことはあるか？」
「！それは」
「……最初は、そうした方が良いかなと思っていたんですけど……
結局、軽くあしらわれるのが、関の山かな……と」
「何故？ 助けを求めれば、必ず誰かが助けてくれる。
……少なくとも、ここにいれば。」
時透が、彼を無下にするとは思えない。
少年が今、自力で助けを求めに行くのが難しい状況にあったとしても、
俺に助けてと言えば済んだ話だ。
あしらわれるだなんて、ある筈がないのだ。
……ここで、なら助けて下さい、と言って欲しかった。
だが、少年は諦めたように笑う。
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奏(プロフ) - 初めまして。いつも見てたのですが、凄く面白くて好きです！続編解除待ってます！ (5月16日 23時) (
レス) id: 872e19f483 (このIDを非表示/違反報告)
リエ(プロフ) - パスワードが………欲しいです……！！！ (2023年4月17日 17時) (レス) @page39 id: 6383860d99 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - とても面白いです！パスワードかけられている方も頑張ってください！応援してます！！ (2023年3月5日 16時) (レス) id: 88503abfde (このIDを非表示/違反報告)
白梅 - VRの話、すっごい面白いです！続きがものすごく気になるのでパスワードが知りたいです！よろしくお願いします。 (2023年1月26日 11時) (レス) @page39 id: 004e6b577b (このIDを非表示/違反報告)
いおり(プロフ) - とってもドキドキして、続きが気になりまくりです……！！続編楽しみにしてます！ (2022年12月28日 20時) (レス) @page39 id: c0ee6ff83c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：眠い。 | 作成日時：2019年11月7日 22時
