高杉晋助【月ヶ瀬ましろ】 ページ41
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町行く人々が笑い合う。
喧騒の中に在るその姿はお世辞にも馴染んでいるとは言えないだろう。腰に帯刀した女は両腕に大量の荷物を抱えて歩いていた。
「また随分と買って来たなァ」
「宇宙では滅多にお目にかかれないような商品も多いですから、ついつい買い過ぎてしまいます」
小さな体が隠れる程の大荷物の一部を受け取った高杉は「こんなモンまで買う必要はあったのか?」と紙袋から覗いたオーナメントを見つめてぼやく。
「折角のクリスマスです、たまには身を興じるのも粋な事ですよ」
「俺はカトリックになった覚えはねェなァ」
とは言え、Aの買ってきたオーナメントは半透明の球体に金粉を塗したもので、金粉で描かれた繊細なレースや雪の結晶模様が美しい高杉好みの物であった。A曰く「クリスマス間近ですからセール品としてワゴンに乗っていました」とのこと。
「…粋だ何だと言う割に無粋な事を言うじゃねーか」
「嘘ですよ、晋助様がお好きだと思って買っただけです」
高杉の渋い表情にもAは涼しい顔で笑ってみせる。必需品を買いに行く際に通ったクリスマスコーナーで見つけたこのオーナメントが高杉の好む装飾だった為に思わず買ってしまったのだ。
「折角ですし隊士達にも何か買っていかれては如何です?」
「柄じゃねェだろ」
「晋助様のお選びになった物なら何だって良いのですよ」
そう言うや否やAは高杉の手を引き近くの店のショーウィンドウの前に立たせた。クリスマス独特の装飾の施されたショーウィンドウの中には薄桃色の着物が飾ってある。「これなんて来島様にぴったりです」とAが弾んだ声で言った。
「如何ですか?」
さながら売上ノルマのある店員の如きAに高杉は「来島はもっと派手な色が好きだ」と小さな声で伝える。その返事にAはにっこりと笑って「他の方々は何が良いですかね」と。
「万斉には新譜でも渡しておけばいい」
「武市様は如何致しましょう?」
「さっきそこで配ってたスタジオアリスのカタログでも渡しておけ」
「承知致しました」
その後もぶっきら棒ながらつらつらと隊士達の望む物を答えられる高杉にAは「皆さんのことを良く理解していらっしゃるのですね」と微笑む。高杉はそんなAから視線を背けて「とんだ戯言だな」と呟いた。
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あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています! (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました! (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました!表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした!次の企画があることを楽しみにしています! (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました!素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます!!素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます! (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ x他4人 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月1日 1時