坂田銀時【しののめ】 ページ35
べたべたと肌に張りつく様な熱気で目を覚ました。
すぐそばにあるのは寝息を立てる銀ちゃんの顔と、寝癖の付いた天然パーマ。お互いろくに服も着ないで同じ布団にくるまっている。寝ぼけ眼をこすりながら枕元の時計を確認すると、寝るには少し中途半端な時間だった。
「ぎんちゃーん、起きて起きて。」
「ん...るせー。」
二度寝する気に慣れず銀ちゃんを道ずれにしようとぺちぺち頬を叩く。すると鬱陶しそうに私の手をはねのけながら、布団の中でもぞもぞと寝返りをうった。二人の体温で満たされた中で、彼の素肌に触れる。確かに脈打つそれはただひたすらに私を安堵させ、幸福感で胸を満たしていった。
「ねー、今日は早起きしようよ。」
ぐいと何度も肩をゆすってみるも、意味のなさない音を呟くばかりで一割も起きてはいないようだった。
こちらに向けられる大きな背中にふと、手を当てる。何も知らないまっさらな私の背中とは全く事なり、無数の傷が刻み込まれていた。いくら強い彼だって、いくら傷は何時か癒えるからといって、この跡は何時までもここに在るまま。死闘を潜り抜けた証として武勇を象徴し、彼に壮絶な過去を背負わせ続けるのだろう。
その一つ一つを慈しむようになぞる。
私が知っているのは酔って電柱にぶつけた頭のたんこぶと、タンスの角にぶつけた小指の負傷位のものだ。この短い手の届く範囲でしか、彼を知らない。それはごく当然の事でありながら、私がどんなに足掻いても越えられない壁。
それでも独占欲の強い私は、出会う前の彼の顔でさえ知りたいと思ってしまう。
「ぎんちゃんってば!」
「るっせんだよ!!んだよ朝っぱらから!安眠妨害もほどほどにしろ!」
しつこい私に観念した銀ちゃんは、不機嫌丸出しの顔で上半身を起こした。銀髪をがしがしとかきむしる。倦怠感を帯びた半目でぎろりと睨みつけられてしまった。
「ねね。散歩でも行こうよ。三文の得だよ?」
「勘弁してくれよ...銀さんぶっ続け仕事からの女一人抱いてんの。お願いだから寝かしてくれって。」
「それはそれはお疲れ様です旦那様。はいっ準備して。」
「容赦ねーな。」
散らばった下着を集めてそのまま洗濯機へ放り込んだ。シャワーは帰ってきてから浴びればいいだろう。今はそれよりも、銀ちゃんと散歩がしたい気分だ。
大きな欠伸をしながら技家絵を取に行く銀ちゃんの動きは、少し鈍い。気だるげに黒のインナーを探す姿を横目に、私もクローゼットを開いた。
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あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています! (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました! (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました!表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした!次の企画があることを楽しみにしています! (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました!素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます!!素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます! (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ x他4人 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月1日 1時