虎と馬02 ページ32
母がAを見下ろす瞳は氷のように冷たい。
Aがピクリと肩を震わすとニコニコと微笑んだ。
「かってにお部屋から出たら駄目でしょ?」
「ママ…」
「×××ちゃんは悪魔様に捧げる貢物なの」
「ちが……」
「だって…こんな髪も瞳と肌も白い…気持ちの悪い子、使い道ないものね」
気づくと真っ暗な空間に1人でいた。
「A?」
安心する声に目頭が熱くなる。
「おに、いさまぁ…!」
パタパタとAがかけ寄ると、膝を立てて小さくなったAをアリスは抱きしめた。
「かわいそうに…」
よしよしと頭を撫でるアリスの手はとても優しい。
安心を求めるようにしがみつくAを地へと叩きつけたのもアリスだった。
「腕1本程度なら人間は死なないだろうか?」
「え…」
離れようとするとアリスの手に力が入る。
そんな事絶対に言わない。
わかっている。
「貴様は食材なのだろう?」
わかっていても熱くなった目頭から溢れる涙は止まらない。
食材になるために生まれてきたはずなのに、
知らず知らずのうちに恐れていた。
嫌だと思ってしまった。
そして、涙と共に言葉が落ちる。
——全て無かったことにしよう。
どこまで遡ろうか。
そうだ、純粋に悪魔を崇拝していた頃に戻ろう。
戻って心に鍵をかけよう。
二度と幸せを望まないように。
そして、求められたら喜んでこの身を捧げよう。
今の魔力では足りない。
もっともっと落ちてしまえば、
もっともっと魔力を得られる。
悪周期じゃ足りないならもっともっと落ちていこう。
Aは口癖のように呟いてきた言葉を久しぶりに口にした。
「どうか美味しく召し上がってください」
そしてAは深海の奥底へとどこまでも堕ちていく。
———
「救護テントはあっちね」
イフリートは慣れた様子で生徒に襲いかかる魔植物を焼き払い、タバコに火をつけた。
Aはどうしているだろうか。
そう、思った瞬間異変に気づく。
「僕…まだ火つけてなかったけ…?」
咥えているのは火のついていないタバコ。
辺りを見渡せばわずかに今までいた場所からずれていた。
「エイト!」
「ツムル!?お前の持ち場このブロックじゃないだろ!」
「そうなんだけど…気づいたらここにいた…これってAさんの…」
時が切り取られて、気づけば意図していない現実が動き出す感覚。
その感覚にイフリートとムルムルは覚えがあった。
「
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あまね(プロフ) - 終わっちゃった?!?れ (12月23日 11時) (レス) @page36 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の凉宮 - 作品もいいし、何より絵柄がド性癖 (5月31日 22時) (レス) @page36 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - ささくれさんの作品本当に面白くて読んでいて楽しいです!! (5月15日 11時) (レス) @page32 id: eb45467fdc (このIDを非表示/違反報告)
山田ささくれ(プロフ) - はにゃ?さん» はにゃさん、こちらでもコメントありがとうございます……!!アズ君は本当に一目惚れでした……!ストックをもう少し増やしたらアップしようと思ってます!!ちょっと展開が重くなりそうで怖いですがこれからも読んでやってくれたら嬉しいです!! (2023年2月8日 0時) (レス) id: 05f14a3afa (このIDを非表示/違反報告)
はにゃ? - アズくんの小説少ないので書いていただき嬉しいです!更新楽しみにしています! (2023年2月6日 1時) (レス) id: ef6fdebb20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山田山本 | 作成日時:2022年12月19日 17時