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「Aちゃん何飲む？ココア？」
「うん、ココアがいい。ありがとう慎太郎くん」
「全然いいよ。…あ、葵ちゃんコンビニ行くの付き合ってくれない？」
「え、私？(笑)」
「うん、好きなもの買ってあげるから！」
「えーーー………あ、行くわ」
じゃあ何か必要だったら連絡して、と慎太郎くんと葵が静かに準備してて
上着とお財布持って出てく慎太郎くんと目が合ってアイコンタクトを取られる。
その後ろをついてく葵とも目が合って、優しく笑って小さく頷いて出てった。
…気を遣ってくれたんだ、２人とも。
バタン、とドアが閉まって２人だけ、となった部屋で聞こえるのはジェシーくんがセレクトした洋画の英語のセリフだけ。
柔らかいオレンジのライトと、流れるゆったりとした映画と。
ソファに寄りかかってボーッと字幕が映し出される画面を眺めたままの樹を見て、今しかない、と静かにロフトに上がって渡そうと思って持ってきた紙袋を片手に呼ぶ。
「……樹、」
「んー？」
「ちょっと来て」
「…え、なに」
「……いいから、」
ちょっと強引に、ちょいちょい、と手招きして不思議そうに歩いてくる樹をロフトに呼んで。
「……こっち」
ウッドデッキのベランダに誘う。
「え、マジでなにどうした」
「………うん」
黙り込んだ私を見て、ちょっと待って、って部屋に戻ってった樹をどうしたんだろう、と大人しく待ってれば急いで樹の上着持って戻って来て何も言わずに、有無を言わさずに。私に着させてくれる。
高いベランダから見える景色は藍色の空と星だけで、聞こえるのはツンと冷たい風の音だけ。
「……どうしたのA」
何かあったのかと心配そうな顔をしてこちらを見つめる樹の顔を見て、やっぱり。と思った。
やっぱり、私は。
「………あのね、樹」
「ん？」
「……これ、」
差し出した、紙袋。
「え、」
「……ハッピーバレンタイン、樹」
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作者名：なち
| 作成日時：2021年9月23日 19時
