３３ ページ33
とりあえず食券買いに行こうぜ、ってみんなでぞろぞろと席を立つタイミングで、
「あっ、北斗くん」
先に歩き始めたみんなに遅れて立ち上がった北斗くんを呼び止める。
「なに？Aちゃん」
「あの、これ……ありがとう」
差し出した紙袋を不思議そうに受け取って中身を確認する北斗くん。
「遅くなっちゃって本当にごめんなさい…すごく助かった」
「ふ、全然。いつでも大丈夫だよって言ったじゃん」
「北斗くんと全然講義も被ってなくて合わなさすぎてやっと渡せた…」
「え、コレ毎回持ち歩いてくれてたの？」
「あ、うん。…あの、一応クリーニング出させていただきました…」
「え！マジでそんなことしなくて良かったのに」
「勝手に、と思ったんだけど……あ、あともし良かったらこれも」
「待って待って(笑)俺マフラー貸しただけだよ？いいの？」
あの日。寒いからって貸してくれたマフラー。
いろいろあったし、年末年始で学校も休みで、尚且つ取ってる講義が一個も被ってない北斗くんに偶然会うというのはなかなかの難題だった。
申し訳なくてラインしたらいつでも大丈夫だよ、って言ってくれてたけど。
借りた上に、あのことがあった時につけてたマフラーをそのまま返すのが嫌でクリーニング屋さんにこれってクリーニングできますか？って確認して綺麗にしてもらった。
それで前にジェシーくんから聞いてた「北斗ってああ見えて甘いもの好きなんだよ」って言葉を信じて有名なお店の焼き菓子詰め合わせも一緒に。
「マフラー貸してくれたの、本当助かったし嬉しかったの、ありがとう」
「……そんな大袈裟だよ(笑)…でも、俺もありがと。コレ大事に食べんね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なち
| 作成日時：2021年9月19日 3時
