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「…はよ、A」
「お、はよう…」
「え！？樹俺には！？俺にはおはようないの！？」
「うるせー(笑)おはよジェシー」
樹と会うのはあの日以来だ。
……お前、断らないっしょ(笑)てか、断れないでしょ。ごめん、……でも今はそれにつけ込ませて。
って言って困った顔して柔らかく笑った樹にやっぱり私は何も言えなかった。
マジで風邪引くから今日は帰ろ、って家に入るまで動揺したままの私を送り届けてくれた樹。
今日までの数日、休みを挟んだのもあって樹と顔を合わせることがなかった。
ラインはしてたけどあまりにもいつも通りの会話だったからあの出来事は幻か何かだったんじゃないのか、と思ってたけど違うみたいだ。
たった一言のいつも通りの挨拶が、どことなく甘く感じる。
……待って、無駄に意識しちゃって今までどうやって接して来たかわからない。
そんな私を他所にジェシーくんは朝からいつも通り元気で、樹は眠そうに私の隣に雑に腰を下ろした。
横からじぃっと視線を感じて横目で確認したら頬杖ついてこっち見てる樹。
「な、なに……」
「んー？別に？(笑)」
ふっ、って笑って前を向き直したけど、いやマジでなんなの………
って思ってたらもっかいこっち向いて。
「……今日の髪型、かわいい」
「………っ」
「俺Aの下ろして巻いてんのも、こーやって上げてんのも好き」
机に伏せたまま顔だけこちらへ向けて、ポニーテールの毛先に樹の指が触れる。
そこに感覚なんてないはずなのに、触れられた事実だけで最も簡単に体温が上がって。
何も言えずにたじろいでたら顔覗き込まれて樹は「…あ、照れてる。かわいい」って満足そうに笑ってまた私のペース狂わせるから。
「……ジェシーくん、樹が意地悪してくる」
「は！？してねぇじゃん！」
「樹、女の子には優しくしなきゃダメだよ？」
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作者名：なち
| 作成日時：2021年9月19日 3時
