サイレント・クンツァイト (ページ22)

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それから樹は前にも増して私を過保護に扱った。

それと。誰一人としてあの日何があったのかとは聞いてこなかった。

その次みんなと顔を合わせた時も普段と何も変わらない雰囲気と会話が生まれてて、それにまた酷く安心したんだ。

きっとそれは樹が、そうしてくれてたのだろうと思ってる。

バイトは元々本腰を入れてやっていたわけではなかったから週３の曜日固定。遅くても２２時上がりだったけど、あの事件があってから樹はしばらく何かしらの理由をつけて迎えに来てくれた。

〝ちょうど慎太郎達と解散したついでに〟
〝タバコ買いにコンビニ行くついでに〟
〝なんとなく暇だったから〟
〝俺もバイトちょうどいいタイミングで上がったから〟

その並べられる理由が樹の優しい嘘だということも初めからわかっていた。

でも、突然辞めることもシフトを変えてもらうことも……あった出来事を言うこともできなかった私はそれに甘えた。

私の中の恐怖心が落ち着いてきた頃、本当にもう大丈夫だよ、って何度目かわからない言葉を伝えたら、樹は不満そうな、腑に落ちない顔をしたけど私の顔を見て安心したのか渋々「…わかった」と言って迎えに来ることはなくなった。

……でも。お迎えがなくなったかと思えば今度は「俺がやだから上がる時連絡して」と言った。ラインをすれば電話で返ってくる。

バイト先から家までの１５分ちょっとの帰り道の為だけに電話してくれる。