１８ ページ18
視線をそっと落として画面を見れば、
『慎太郎くん：大丈夫ー？道迷った？』
『樹：お前今どこ？』
『不在着信 慎太郎くん』
『不在着信 葵』
『不在着信 ジェシーくん』
『不在着信 樹』
『樹：マジで電話出て』
『不在着信 慎太郎くん』
『不在着信 樹』
時間を見れば広場を出てからもう３０分経ってる。
震える手で発信ボタンを押そうとしたら画面に映し出される『樹』の文字。
「あ、ちょっと。ダメだよ〜電話しちゃ」
「……、返してっ」
パッと手からスマホが抜き取られた。
そのまま「はいはい、とりあえず車乗ってって」と力尽くでガラッと勢いよく開けられた後部座席車に引っ張られる。
……やばい、やばい。
抵抗した瞬間に男の手からスマホが地面に落ちた。
『っ…、もしもし？A？お前今どこ』
「樹っ、た、……」
樹、…樹、たすけて。
「なに、連れって男？」
「……離して…っ」
「ねぇ大人しくしてよ。悪いようにはしないって言ってんじゃん」
イライラし出したのか笑みが無くなって。
必死に抵抗する私をすごい力で押さえつけられる。ダメだ、全然敵わない。
「ねぇ、痛い思いすんのヤだよね？黙って大人しく乗れって」
「や、だっ…離してくださっ、」
スマホもカバンも地面に落としたまま必死に抵抗すると、それを上回る力で押さえ込まれる。ほんとにだめかもしれない、と後部座席に押し込まれそうになっていたところで、
「…お前らなにしてんの？」
後ろから聞きなれた声が。
「じゅ、り…」
男が振り返った瞬間に力が弱まった。その隙に、と思ったのに安心感で力が入らない。
「…お前ら、何してんの」
「なに、って一緒に遊ぼうよって、」
「お前ダレ？(笑)」
温度のない声色。
「気安く触んな」
私の体を押し込もうとしていた男の手を掴んで思いっきり振り払った。
樹の聞いたことも見たこともない低い声と怖い顔。今にも殴りかかりそうなくらい体を震わせていた。
…こんな樹、知らなかった。
怖くなって口元を手で覆う。
呼吸が上手くできなくて、今までどうやってしていたのか忘れるくらい呼吸が乱れてて。
深呼吸しようにも上手く酸素が吸えなくて。
そしたら樹の視界が私を捉えて、震えて動けずにいた私の腕をそっと、
そしてぐっと。強い力で。…だけど優しく引いて。
ふわり、と気づいた時には樹の腕の中へと引き寄せられていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なち
| 作成日時：2021年9月19日 3時
