サイレント・クンツァイト (ページ1)

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大学２年の夏頃、進級して新しく始まった講義でよく近くに座ることがあって仲良くなったジェシーくん。

最初に声をかけてくれたのはジェシーくんの方だった。「いつも席近くだよね？隣いいかな？」って。

大体真ん中か後ろあたりにいつもどっちかが先に来てて、隣に座って「おはよう」って挨拶して一緒に講義を受けるのが日常化してきた頃。

講義の途中でこっそり遅れてきて、ジェシーくんの横に「……寝坊した。」って今起きた？ってくらい眠そうな顔でストンと座ったのが樹だった。

「またぁ？」ってケラケラと小さな声で笑ってジェシーくんが話しかけた時には、もう既に机に突っ伏して寝てた。

まぁ、このおじいちゃん先生の講義ゆるゆるだから単位は来てりゃもらえるだろうけども。…と、思ってたらスースーともう寝息が聞こえてて。

ジェシーくんは私の方を向いて、「コイツ、本当朝起きないの。寝起き悪いし。」ってまたケラケラと笑った。

ジェシーくん越しに見える後頭部はうすい桜色したピンク色で、そんな色してサラサラで。髪の毛強いのかな、傷んでないの羨ましい…とかそんなこと考えてた。

講義が終わって片付けしてたら、まわりのザワザワでむくり、と起き上がった彼はスマホをいじりだし、その後、「樹くん！」って甘い高い声のいかにも、な女の子が迎えに来て、「じゃあね。」ってジェシーくんと私に片方の口角上げて笑って去っていった。

第一印象は、チャラいな……。
特にジェシーくんは赤い髪の毛で大きな身長で尚且つ私服が目立つ色や柄を着てるから一見怖そうに見えるけど、優しい笑顔で笑う上に本当に優しい。ハーフだって言ってたけどきっと彼のジェントルマンなところはそこから来てるのかな、なんて。

そんなジェシーくんの友達にいかにも、な感じで少し驚いた。でも確かにジェシーくんは分け隔てなく誰にでも優しいし、私なんかとも仲良くしてくれてるから、彼と仲良しなのもって納得した。

「Aちゃんこの後、空き？」
「うん、空き。カフェテラス行ってランチ食べようかな」
「え、じゃあ俺も一緒に食べていい？」
「うんもちろん、お腹すいたね」

なんて会話して。

樹とは当初、ほぼ話すことなかったし、それ以降も大体講義に遅れてきては寝てて、終わったら女の子が迎えにきて「じゃあね」って出て行く。なんなら来ない日もあった。

そして迎えに来る女の子は日によって違う子だった。