シークレット・ランデブー (ページ7)

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Aちゃんは北斗の言う通り、かなり鈍い。

打った矢は悉く当たらないし、分かりやすく言えば、野球ボールで投げたモノをサッカーボールで投げ返してくる感じ。

…他の女の子に通用してきたモノや、一般的な女の子が喜ぶモノはAちゃんには通用しない。

…俺、爆モテの異名マジでどこ行った？ってくらいには逆に俺が掌で転がされてる。

でも、もはやそれさえもいいな、と思った。

俺に対して媚も売らない、頬を赤く染めて言い寄っても来ない。俺が声を掛けても、こうして一緒にいても変な期待をしてこない。

…なのに俺と会えば嬉しそうな顔をして、「田中さん！」って俺の名前を呼んで駆け寄って来る。

その下心やズルさのない姿が新鮮で、純粋で。

だからこそやっぱり、…報われて欲しいと思った。

「どうだった？昨日、彼氏帰ってきてくれた？」
「……たぶん？」
「たぶん？(笑)」
「もうここ何ヶ月かは、わたしが寝てから帰ってきてわたしより先にお仕事行っちゃうか、出張とかで泊まりで帰ってこないとかがほとんどなので、朝シンクにお皿があれば帰ってきたんだなあ、って」
「………なるほどね、…で、今日は朝起きたらシンクにお皿が置いてあったんだ」

良い先輩でいよう。この子が黒い何かに染められてしまうときに守ってあげれるような、そんなポジションでいい。と思っていた感情は最も簡単に散る。

……ねえ、なんでそんな幸せになれない恋愛してんの？
どうしてそんな。

…………俺なら、

さみしい、とぽつり呟いたAちゃんを見て俺は決めたんだ。

…待とう。

Aちゃんがこっちを向くまで。

Aちゃんは幸せになるべきだよ、もっと、大切にされるべきだよ。

その相手はきっとソイツじゃない。

いるべき場所は、そこじゃないよ。