シークレット・ランデブー (ページ35)

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押してもダメなら、一旦引こう。

飲み込むことすら本当は出来ていないのに、余裕ないなんて思われたくなくて、これ以上避けられるメンタルも持ち合わせてなくて飲み込んで気づかないフリをした。

〝Aちゃんが待ち望んでた〟エレベーターが目的の階に止まって扉が開く。

様子を横目で伺いながらドアを押さえて先に降りるように促すと他人行儀なお礼が返ってきて、そのまままた逃げるように歩き始めるから。

何もない、何でもないって言うのならそれでいい。

話せるようになったら、話したくなったらでいい。

だったら俺も気づかないフリして今まで通り待つから、とやっとの思いで縮めた距離感をこれ以上離れさせたくないと、話題を切り替えたのに。

「…あ、Aちゃん今日さ、非常階段…」
「……ごめんなさい、しばらくお休みします…！」
「はっ、え…ちょ！」

降りた先でビクリ、と肩を揺らし固まったAちゃんから思わぬ返事が返ってきて、逃げるように去ってく後ろ姿に俺の動揺が声に出る。

これは、………徹底的に俺と距離を開ける気だ。