シークレット・ランデブー (ページ23)

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「あ、田中くん！」

スマホの画面を眺めながらAちゃんまだかな〜って待ってたら、甲高い声が俺を呼ぶ。

「ああ、今井さん」

帰る為に降りてきた彼女に柔かな笑顔を作ってお疲れ様、って返すと、嫌な予感は案の定。

「もうお仕事上がりですか？」
「あー…うん、今日約束あって人待ってんだよね」

先手打ったらまさかの。

「えっ！誰とですか？」
「あーーーえっと…」
「私もお邪魔したらダメですか？」
「………ははっ」

ダメですか？って腕を組む俺に触れて来る。

…めっちゃ肉食。どうしよう。と思ってたら彼女越しにAちゃん…と、北斗の姿が見えて近い距離で話し込む姿。

は？キスすんの？ってくらい身長差がある北斗が少し屈んでて、Aちゃんは上目遣いで俺一瞬心拍数エグかったんだけど。

「…仕事の話も兼ねての予定だからさ。ごめんね？」
「えー残念」
「また、今度ね」

…そのまた、は出来れば来ないで欲しいけど。

渋々諦めてくれて、やっと解放される。

すぐに駆け寄って待ち焦がれたその姿に

「Aちゃんやっと来た〜(笑)…また残業になったかと思ったよ(笑)」

って声を掛けたら驚いた声を出して辺りをキョロキョロし始める。

そんなAちゃんを他所に何か言いたげな北斗の視線が俺に向いて、ん？って視線で返すとちょっと笑って逸らされた。

……それよりまだキョロキョロしてますけどもお嬢さん。

「…え、なになに、なんで北斗？(笑)」
「あー、いや今エレベーターから降りてきたらAが、」
「っうわあ！言わないで……！」

大きな声を出して咄嗟に両手で北斗の口元を覆うAちゃん。

…すごい焦るじゃん、なに？と思って北斗にジロリ、と視線を向けたけど北斗もビックリした顔してて２人して…え？ってなる。

北斗が痺れを切らしてAちゃんの手を掴んで下ろして

「……まあ、いいや。(笑)じゃ、俺お先に。お疲れAと樹」
「お疲れ、…っていやお前(笑)会社ではやめろよ(笑) ちゃんと先輩って呼べ(笑)」

去ってく背中いろんな感情込めてべしっ！って叩いてやった。

逃げるように笑ってロビーを歩く北斗からAちゃんに視線を戻したら、ぼーっと北斗の背中を見つめていて。

……ねえ、よそ見しないで

「…そんな見たら北斗穴開いちゃう。(笑)…じゃー行こっか？(笑)」
「あ……はい！」

って意地悪でその視線が伸びてるのを前に入り込んで顔近づけたらわっ、って言って後ずさられる。

…北斗に許された距離と、俺には許されない距離。