シークレット・ランデブー (ページ22)

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うーわ。なんでこの会社こういうとこアナログなの？

午後、仕事に取り掛かって必要な過去データを探してたら見つからず、髙地に確認すると資料室だわ、と言われた。

まだ踏み入ったことのない資料室へ足を進めて扉を開けると、……誰かいる？

ぐっと頭を傾けて覗き込んだら

「…あれ？Aちゃんじゃん」

なに、今日ラッキー過ぎない？俺。

そしたらぱあっとみるみる笑顔になって、

「田中さん！今ちょうどラインしようと思ってて…」

ってすぐに眉を下げて落ち込んだ顔をするAちゃん。

「ん？ライン？…Aちゃんも過去資料探し？(笑)」
「はい、先輩がお探しで…、田中さんもですか？」
「うんそう。過去の売上のファイル…今日は忙しそうだね？」
「なんでか電話も午後から鳴りっぱなしで…」
「あー、多分新しく企画決まったからだね」
「…あの、今日のおサボり……」

え？(笑)おサボり？

俺との非常階段、おサボりって言ってんの？(笑)

可愛くって思わず吹き出しちゃったじゃん、やめてよホントに。(笑)

「うん、おサボりね？(笑)おサボり……(笑)クソかわいいじゃん(笑)」
「……えへへ、」

あ、笑って誤魔化した。(笑)

「んじゃあ〜、今日はお預けだ。(笑)」
「…はい」

…え、なに、俺との〝おサボり〟行けないからそんな落ち込んだ顔してたの？

………ふーん、そう。俺もう、やられてて無理なんですがAさん。ニヤケちゃいそうなんですが。ポーカーフェイス必死に取り繕ってますけど。

……じゃあさ。

「…Aちゃん、今日定時で上がれそう？」
「……たぶん、上がれるはずです」
「……今日その後ご飯どう？…おサボり？なしで。(笑)いいものもあげたいし」

ワンチャン、に賭けて。

〝先輩〟としてのお誘いだから許されるよね？

Aちゃんは少し驚いた顔をして考え込んでるようで。

「えっと、……それは」
「北斗はナシで。(笑)……２人で。……どう？(笑)」
「い、…行きたいです！」
「んふ(笑)…じゃあそうしよっか」

食い気味にくれた返事に加えて、嬉しそうにニヤニヤしてて。

ずるくて、ずるくて、敵わない。

ホント思ってること全部、顔に出ちゃう感じが堪らなく愛おしいな。

期待しそうになるその反応は天然からくる他意のないものだと思うけど、Aちゃんが少しずつ心を開いてくれてるのを示してるから。…もうそれでも良かった。