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「…失礼致します、」
「ありがと。……コケんなよ(笑)」
「や、やめてよ…まだあと半分運ばなくちゃなのに…」
って北斗にイジられて小声で言い返してるけど、
…え、まだ運ぶの？(笑)大丈夫？(笑)
「…田中さん、失礼致します」
「Aちゃんありがと」
お礼言ったらにこにこして出て行こうとしたからファイル開いて用意してたポストイットを剥がしてAちゃんの手の甲に貼り付ける。
驚いて固まったAちゃんの視線が手から俺に戻ってきて、後ろの北斗に移る。
そしたらハッ、とした顔して慌ててぺこ、って頭下げて会議室を出て行った。
「…お前今何したのAちゃんに」
「いや、何も。(笑)チラッと見たら慌てて出てった。(笑)」
お茶汲み行ったんだろ、ってプロジェクターの方に視線を戻した北斗。
…が、視線がまた戻ってきて
「…樹は何したの、アイツに」
……わかっててやったんだ。北斗が見てることをわかっててわざと。
「ん？…あー、ご褒美あげようと思って」
「ご褒美？」
「…いつもあの子頑張ってるから。色々」
「………そ」
ごめん北斗。あの子は、Aちゃんは、譲れない。
お互いそれ以上は何も話さず、会議内容に集中して。
そしたらまた扉が開いてデジャヴかのような光景。
半分くらい配り終えたくらいで、ずるっ！ってお盆持ったまま転びそうになってるAちゃん。
……思わず吹き出しちゃったんだけど。マジで。(笑)
危なすぎる。(笑)
熱がる素振りないから怪我は無さそう…だけど、反省したのか元々小柄な体を小さく小さくしてお茶配っててもうマジで無理。(笑)
ソレに気付いてるの俺と北斗だけっぽくて、北斗は…やると思った、って横で頭抱えてるし、俺はツボに入ったまま抜けられずバレないように下向いて耐える。(笑)
しょぼん、って効果音が付いてるかのようにないハズのしっぽと耳を下げてるのが見えて、
…ホント犬。(笑)クソ愛おしい。(笑)
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作者名：なち
| 作成日時：2021年8月18日 20時
