シークレット・ランデブー (ページ1)

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横浜支店から本社への転勤命令が出た。春でもなく、この暑い季節がやっと終わって涼しくなり始めた時期に。

本社が人手不足で手が回らないらしく、繁忙期となる冬に向けて閑散期となる今のタイミングで呼ばれた。

まあ、特にこだわりを持っていたわけでもないから二つ返事で東京へ行くことに。

元はと言えば本社で働きたいと思っていたし、同期の髙地もいるし、後輩の北斗もいるらしいし全然前向きな返事だった。

転勤初日、……の前日。

明日は車で出勤すんのヤダし、このまま荷物置きに行っちゃおう。と本社へ。

一通り荷物をデスクの上に置いて片付けようと思ったけど、ポケットに入れっぱになってたスマホが震えてるのに気づいて画面を確認すれば『髙地優吾』の文字。

『…なに？』
『いやお前もしもしくらい言えよ(笑)』
『…もしもし？』
『今じゃねえよ！(笑)』

なんだよ、めんどくせぇな(笑)って言ったら明日からこっち初日で心配して連絡してやったのにふざけんな(笑)って返ってきた。

髙地は昔っからこういう優しいとこがある。

「今丁度会社に荷物置きに来たとこ」
「もう２０時なるじゃん。誰もいないっしょ(笑)」
「ここのフロアにはいないっぽいわ」

まあ明日からよろしく、って電話切りあげてコーヒー飲みたいと自販機を探した。

缶コーヒーを取り出してふと重そうな扉が目に入る。

何気なしにガチャン、と重めのドアを押したら街灯しか灯りがなくて暗い外の非常階段に繋がってて秋の風がゆるく吹いた。

…いい場所みっけ。

また震えたスマホの画面を確認したら横浜の同期『森本慎太郎』の名前。