スタンドバイ・ユー (ページ10)

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周りを見渡して、

…よし、見られてない。

非常階段へと繋がる曲がり角を少し小走りで曲がって、少し重いドアをそっと開けた。

「…あ、来た」

柵にもたれて、外を見ていた田中さんが振り返って笑った。

夕方のピンクと水色が混ざり合った空が、田中さんによく似合う。

柔らかい風に乗ってまたほんのり、バニラの香り。

…これは、女の子みんなかっこいいって言う。

「…こんにちは」
「ははっ、こんちは？」
「…あの、さっきの書類、」
「うん、アレもう要らないヤツ(笑)…Aちゃん何してるかな〜ってふと思って」
「………仕事してましたよ？」

知ってる、そういう意味じゃなくてね？って笑った田中さん。

え？どういう意味？

「……Aちゃん元気ない？」

突然、そんなことを聞かれてちょっと驚く。

「えっ、私そんな風に見えました？」
「まぁ、ちょっとした勘というか」

元気、

…元気かと聞かれれば元気だと思う。

「…元気ですよ？」

考えてから笑って答えたのに、

「……じゃあ、…なにかあった？」

優しい顔して顔を少し覗き込まれる。

なにか、………はあった。というか、もうずっとなにかある。

「…その顔はあるね？」

考え込んだ私に田中さんはそう言った。

浮かんだのはひろくんの顔だった。