スタンドバイ・ユー (ページ41)

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ディナーの時間が始まったばかりの店内にはほとんどお客さんはいない。

ちらっと視線をずらしたら、テーブルの端にはメニュー表と並んで片手上げたクマさんの置物が並んでてかわいい。

「……かわいい…」
「Aちゃんこーいうの好きでしょ」

洋楽とか聴かないからわからないけど、カウンターに置かれたレコードプレーヤーから流れる音楽も、キラキラ光るカーテンライトも、店内いろんなところにクマモチーフのイラストや置物が置かれてる感じも、ゆらゆらと揺れるガラスに入ったキャンドルの火も、好き。

…わたしに合わせて、お店選んでくれたのかな。うれしいな。

「とりあえず、テキトーに頼んじゃおっか」

メニュー表、田中さんが持ってくれて、開いて２人で覗き込む。

…うわあ、全部おいしそう、迷っちゃう。
って言ったら田中さんが何個か頼んで分けて食べよって提案してくれて喜んで頷いた。

飲み物はわたしはりんごジュースで田中さんはウーロン茶。

わたしがソフトドリンク頼んだから、気遣わせちゃったかと思って、お酒飲まれないんですか？って言ったらAちゃんとならなくても楽しいと思うから今日は飲まな〜い(笑)って言われた。

先にお通しと飲み物来て、お疲れ様、って乾杯して。

次々と運ばれてきた料理、ぜんぶ美味しい。
好きなもの、は一緒みたい。

「……そういえばさ、」
「？はい」
「…さっき、わざと聞かなかったんだけどさ…ここまで来てアレだけど……彼氏平気なの？」

平気なの？とは、たぶん田中さんとご飯食べてることだよね？

「…大丈夫です。……前はユウリちゃんとか、会社の飲み会とか、そういうの報告してたんですけど…」

〝詳細までいらないよ(笑)帰り遅くなるとか、メシないとかそれだけでいい〟ってある時面倒くさそうに言われてから誰と、とか、どこで、とか、何時から、とか。言わなくなって(笑)って言えば、

「…俺だったらヤだけどなぁ。彼女がどこで誰と何してんのかわかんねぇのは」

他愛もないこととかも連絡し合ったり、くだらないこと話したりしたいじゃん？って言われて、頷く。…わたしも、そう思う。

…でも、その言葉の本当のところは〝そういう事〟だと思ったから。

〝俺も聞かないから、聞いてくんなよ〟

……と同時にふと浮かんだ疑問。