スタンドバイ・ユー (ページ40)

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「お店ね、駅の方だから１０分くらいで着くかな」

Aちゃん食えないものある？って聞かれて、ないです、って言ったらえらいじゃん(笑)って褒めてくれる。

「俺グリンピースとかワカメとか嫌い。(笑)」
「嫌いな人多いですよね、とくにグリンピース」
「……食えないもの子供っぽいとか今思ったっしょ？(笑)」
「…バレました？」
「うわ！ひでえ！(笑)」

Aちゃんこういうやり取りできんの知らなかったわ(笑)、って胸に手を当てて傷ついた〜、ってやってくる。今日の料理に入ってたら全部食べてもらうかんね？って脅し文句言われたけど、わたしグリンピースもワカメも食べれますもん。(笑)って言い返したら、…そうだったわ。(笑)ってちょっと落ち込んでるフリするから。

それがおかしくて笑う。

……それを見て、田中さんもまた優しい顔して笑って。

…やっぱり、いいなあ。今までひとりっ子で生まれて育ってきて、向けられる愛情が一人に集中するし、小さい頃からひとりが多くてひとり遊びも、大きくなってからのひとりの時間も、それが当たり前だと思っていたけれど。

こんな身に沁みて感じるあたたかさや優しさ、愛情を知らなかったから、お兄ちゃんがいるっていいなあ。

…一度知ってしまったこの心地よさと幸せな感情は、もう手放したくない、とさえ思わせる。

着いたのは通り沿いにある階段を降りて、地下にあるお店。

自然とドア開けて待ってくれて、ありがとうございます、って言って先に入らせてもらった。

予約してた田中です、って田中さんが店員さんに告げると、お待ちしておりました、って中に通される。

店内は木を基調とした感じの作りで、暖色のライトがぼんやりと点いてて、少し暗い。
カウンター席が数席あって、テーブル席とソファ席。
壁にプロジェクターで猫とネズミの海外アニメが映し出されてて、テーブルにはキャンドルが焚いてある。

……オシャレだ。

案内されたソファ席で腰掛けるとふわり、と沈んだ。

スーツのジャケット脱いでソファの背もたれに掛ける仕草さえも絵になる。

…そりゃ、モテるよなあ。田中さん。

こんな素敵なお店知ってて、優しくて、かっこよくて。