スタンドバイ・ユー (ページ39)

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…ひろくんとお父さん以外の男の人とごはん食べに行くことなんてなかったから、緊張する。

わたしの狭い歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれてる田中さんの横顔をこっそり見上げれば、…ん？って微笑みかけてくれたけど、緊張と不安でドキドキしている鼓動に、また名前の違う鼓動が加わって、微笑み返す余裕なんてない。

……くそぅ、かっこいいなもう！

…わたし、ご飯喉通るかな。

なによりも。

…どうか、誰とも遭遇しませんように、見られませんように、

とぎゅっと目を瞑って祈る。

「っあぶね！(笑)」
「わ、」

一瞬だけ目を瞑っただけだったのに前から歩いてくる人とぶつかりそうになって、肩をそっと引き寄せられてよろめいて田中さんの甘い香りが鼻をかすめる。

「……ねー、ほんっと危なっかしい(笑)なんで歩きながら目ぇ瞑ってんの(笑)」
「す、すみません……」
「…マジで気をつけてよ？(笑)……まーでもAちゃんほんと、すーぐ目瞑るし、よそ見するからな〜(笑)」
「…え？(笑)」

わたし田中さんの前でそんなことしてました？って聞いたら、…なんかこう、一点だけずーっと見つめてるからさ俺が見ても気づいてくんない。(笑)っていじけた顔して言われる。

「え？…え？そんな時あったんですか！？言ってくださいよ！無視したみたいじゃないですか…！」
「ふへっ(笑)いや、……いい事なんだよ？一点だけ見つめてんの。…でもまあ見つめるべき場所、ではないんだろうけど」
「え、なんの話ですか…？」
「ん？Aちゃんの話。(笑)」

意味が理解できず、ぽかんとするわたしの顔を見て笑いながら、……しかもよそ見すんだもんな〜(笑)ほんと困っちゃう、って言われる。

……え、ほんとになんの話？

「え、ほんとにわたし気づいてなかったならごめんなさい…」
「え、そんなガチで落ち込まないで！(笑)半分冗談だから！(笑)…うんまあ……まだ。気づかなくていいよ」

田中さんはそう言ってもうこの話は終わり、って空気出して口角を上げるから、わたしもまだいいなら……いっか。って飲み込んだ。