スタンドバイ・ユー (ページ38)

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「Aちゃんやっと来た〜(笑)」

また残業になったのかと思ったよ、って笑われる。

離れたところにいたはずの田中さんが目の前にいて、えっ、と声が出る。…あれ、先輩は？

きょろきょろしてたら田中さんがわたしの名前を呼ぶ。

「…え、なになに、なんで北斗？(笑)」
「あー、いや今エレベーターから降りてきたらAが、」
「っうわあ！言わないで……！」

慌てて北斗くんの口元を手で押さえる。

２人とも驚いた顔をして顔を見合わせてるけど、変な人すぎた自分が恥ずかしいのと、明日からデスクなくなるかもしれないことが知られたくないのでこれ以上喋らないで、北斗くん…

冷めた視線で見られた後、手を掴まれて下される。

「……まあ、いいや。(笑)じゃ、俺お先に。お疲れAと樹」
「お疲れ、…っていやお前(笑)会社ではやめろよ(笑)」

ちゃんと先輩って呼べ(笑)、って北斗くんの背中ぺん、って叩いて笑ってて、北斗くんはもう仕事終わったじゃん、って笑いながら逃げるように帰ってった。

……え、この２人そんな仲良しだったの？

と思いながらエントランスを出てく北斗くんの背中をボーッと眺めてたら、視界にドアップな田中さんの顔が写り込んできて、驚いた衝動でわ、って後ずさる。

「…そんな見たら北斗穴開いちゃう。(笑)…じゃー行こっか？(笑)」
「あ……はい！」

エントランスを出ると、ふわふわとそよ風が吹いていて、空は少し暗くなり始めてた。