スタンドバイ・ユー (ページ36)

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…と、ドアがまた開いて革靴のコツンって音がする。

誰か来た？

と思って棚の横から顔を覗かせれば、

「…あれ？Aちゃんじゃん」

今日よく会うね、ってにこってしてくれる。

「田中さん！今ちょうどラインしようと思ってて…」
「ん？ライン？…Aちゃんも過去資料探し？(笑)」
「はい、先輩がお探しで…、田中さんもですか？」
「うんそう。過去の売上のファイル…今日は忙しそうだね？」
「なんでか電話も午後から鳴りっぱなしで…」
「あー、多分新しく企画決まったからだね」

…やっぱり。

今日は、秘密基地行けないこと伝えなきゃ、と
あの、今日のおサボり……って恐る恐る言ったら吹き出した田中さん。

「うん、おサボりね？(笑)おサボり……(笑)」

…クソかわいいじゃん(笑)って目尻に皺作って笑ってて、田中さんってこんな顔して笑うのか、なんて思ったりして。…そんな変なこと言ったのかとえへへ、って笑って誤魔化した。

「んじゃあ〜、今日はお預けだ。(笑)」
「…はい」

……残念だなあ。いいもの、ってなんだったんだろう。

しゅん、としてたら、

「…Aちゃん、今日定時で上がれそう？」

は〜、笑った、って笑いが落ち着いた田中さんが言う。

「……たぶん、上がれるはずです」
「……今日その後ご飯どう？」

おサボり？(笑)なしで。〝いいもの〟もあげたいし。って。

ひろくんいないし、ご飯作るのめんどくさかったからうれしい、けど…

「えっと、……それは」
「北斗はナシで。(笑)……２人で。……どう？(笑)」
「い、…行きたいです！」
「んふ(笑)…じゃあそうしよっか」

田中さんと……ご飯…！緊張しちゃう！

顔に出てたのか、田中さんがわたしの顔見てまたちょっと笑って。

「…たのしみです、お仕事頑張れます！」
「…ん。(笑)じゃー…お店は決めとくから定時ごろまたラインすんね？」
「はい！今日はなにがなんでも残業しません！」
「ふはっ(笑)うん、残業ならないよーに頑張ってね？(笑)」

じゃあ、お先に失礼します！って頼まれた資料抱えて資料室を後にした。