スタンドバイ・ユー (ページ33)

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「……ねぇ、A」

気持ちと一緒に落ちてた視線が、名前を呼ばれたことで戻る。

ユウリちゃんは優しい顔をしていて。

「…わたし、Aには幸せになって欲しい。」
「…うん」
「……頑張り屋さんで、健気で、純粋で、可愛くて。」
「なあに？(笑)突然そんなこと、」
「突然じゃない、そんなこと、あるんだよ。」

急にわたしのこと、褒め始めたユウリちゃんの言葉を遮ったわたしの手をあたたかいユウリちゃんの手が包み込んだ。

「…自分のことより周りのことばっか考えて、優しくて、…ちょっとドジで抜けてるところもあるけど。(笑)」

…ああ、泣いてしまいそうだ。

「それから……わたしのことがだいすきな。」

あまりにも優しく、綺麗に笑うから。
ぽろん、と涙が出た。

あと、泣き虫もだね？(笑)なんて言われて。

「そんな…、そんなAには誰より幸せでいて欲しいと思ってるの、わたし。」
「そんなの、ユウリちゃんがわたしに優しくしてくれて、大事にしてくれるからっ、」
「うん。大事だよ。…でも自分が何かしてもらった時にそれをちゃんと返せるのは誰にでも出来ることじゃない。」

それにね？って言葉を繋げたユウリちゃん。
Aはそう言うと思ってたけど、わたしが、周りが、大事にしたいと思うのは、常にAが周りを大切にしてるからなんだよ、って。

……ほんとに、そんなことないのに。

鼻を啜ったわたしにちょっと笑って、ティッシュで涙を拭いてくれる。……ユウリちゃん、ママみたい。

「…だからね、もしもAがその…ひろくんのことを、もう好きじゃないのなら、…一緒にいて幸せじゃないのなら………ちゃんと考えた方がいいと思う」
「……うん、」

……薄々、どこかでは気づいていた

気づかないふりして、見過ごすにはもう難しいところまで来ていることも。

きっともう、……戻れない。
あの時の２人にも、あの頃のわたしの気持ちにも。