スタンドバイ・ユー (ページ14)

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「あの、」
「ん？」
「どうして、わたしなんかに、」

わたしなんかに、こんなに良くしてくれるんですか？

って浮かんだ疑問を口にしようとすれば、田中さんの手がわたしの口元に伸びてきて、しぃ、って人差し指。

〝なんか〟、じゃないでしょ？って。

「…どうして、わたしにこんなに良くしてくれるんですか？」

恐る恐る言葉を組み替えて聞けば、

「んー………なんでだろう？なんかこう…」

田中さんはちょっと考え込んで、……妹みたいだからかな？(笑)って笑った。

「…田中さんって妹さんいらっしゃるんですか？」
「んーん、いない。(笑)俺ん家５人兄弟だし。……でも欲しかったんだよね。…だから、Aちゃん妹っぽくて甘やかしたくなるっていうか」

妹か。…なるほど。納得。

田中さんがお兄ちゃん……贅沢だ

こんな優しくて、かっこよくて、素敵なひと。

「田中さんみたいなお兄ちゃん、わたしも欲しかったです。わたしはひとりっ子なので」

そう言えば田中さんは嬉しそうに笑って、じゃあコレで成立したじゃん、お互い願ったり叶ったりでしょ？って言って、はい、ってQRコードを差し出した。

失礼します、と読み取れば画面に表示される『田中樹』の文字と、ワンちゃんのトップ画面。

「わあ、かわいい！」
「…ん？……ああ、愛犬のソラちゃん。かわいいっしょ？」

愛くるしい顔をして、視線がたぶん田中さんの顔なワンちゃんを見てにやにやしてたら、てかコレ彼氏くん？って聞かれる。

「あ…そうです」
「…イケメンじゃん」

その写真は……１年くらい前にクリスマスデートした日のツーショットだ。

「Aちゃんこん時髪短いね？」
「…彼が好きだって言ってたから、」

付き合う前まで伸ばしてた前髪も髪の毛も短い方が好きだと言ったひろくんに少しでもかわいいと思われたくて１５センチくらい切って。

ふぅんって田中さん。

「確かにかわいいね短いのも。ショートもロングもどっちも似合うけど……俺はこっちのが好きだな」

ってゆるく巻かれたわたしの毛先に触れて、片方の口角上げて笑う。

胸が高鳴ったのは、気のせい。

田中さんの優しさが妹へ向けられたものだから、こんなに心地いいんだろう。心がふわり、と温かく包まれる感覚。