スタンドバイ・ユー (ページ12)

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何事もなかったかのように、

わたし、ちょっと長めのおトイレでしたよ〜って顔して
しれーっとデスクに戻った。

周りの様子を伺ってみたけど、もともと陰なわたしがおサボりしてたことなんて誰も気付いてない。

ほっと胸を撫で下ろした。

………と思ったら後ろのデスクの北斗くんと目が合った。

壁に掛けられた時計を凝視して、また私に視線が戻ってくる。…じとーっとした視線。お前、サボってたな？って顔。

……バレてる。…しれーーーーっと静かに前向いてパソコンに向き合った。

…よーし、今日は定時で帰る！

それで、……スーパー寄ってひろくんの好きなもの作ってお家で待ってよう。

スマホをポケットから取り出して

『今日の夜ご飯はひろくんの好きなハンバーグだよ！』

ってラインを送信して保存しておいた資料に取り掛かった。

…無事定時で上がれた。

スーパーにも寄ったし、ひろくんの好きなハンバーグも出来上がった。

ちゃんと有言実行できた自分と

…違かったのは、いつまで経っても返ってこない連絡。つかない既読。

お風呂も済ませて、机の上に並んだ２人分の夜ご飯を見つめながらひろくんの帰りを待った。

何度確認しても、ラインの返信は来なくて、
ぼーっと眺めていたテレビに映るバラエティ番組はいつの間にかニュース番組になって

わたしのスマホが光ったのは日付が変わるほんの数分前だった。

『連絡遅くなったごめん。今日付き合いで遅くなるからメシいらない。』

「…せっかく………作ったのにな、」

レンジで温め直して

「いただきます」

ひとくち食べた。

わたしの好きなデミグラスソースでも、ありきたりなケチャップでもなくて、ひろくんが好きな和風ハンバーグ。

…上手にできたのに。

ちょっとだけ悲しくなってぽろんと涙が出た。