スタンドバイ・ユー (ページ2)

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私の横に来て柵にもたれかかり、

…あ、この匂いさっきの。

「なーんだ、転勤早々イイサボり場所見つけたと思ったのに。…なんてね。俺、田中樹です。…名前は？」
「…宇野Aです。」
「Aちゃん、ね。…俺今日から…というか明日から？ここに転勤になったからよろしくね？」

そう言って片手に持っていたコーヒーを飲んで私の顔を覗き込んだ顔は、暗くてよく見えなかったけど多分イケメン。転勤…ってどこから来た人なんだろう？この時期に珍しいな。

「…てか、なにしてたの？」
「あ、ちょっとミスがあって残業で…」

目がチカチカして来たのでちょっと休憩しに来ました、って言えば

「…え、マジで？こんな遅くまで？」

腕時計を確認しながら驚いた顔をした、田中さん。

もう終わる？大丈夫そう？って心配までしてくれて、…いい人だ。

「大丈夫です！ほんと残り少しってところなので」
「そっか、お疲れ様。…じゃー、俺そろそろ戻るね。さっきこっち着いてさ、荷物片さなきゃなんだよね」

面倒くさそうな表情をして

残業、がんばってね？ってふっと笑って去る後ろ姿に、

「っあ、あの田中さん！…ここ……この非常階段、ほとんど人来ないので、その………大丈夫ですよ」

サボるには絶好の場所です！バレませんよ！
なんて、言うのはちょっとおかしい人に思われるな、と思ったら日本語がおかしくなった。

振り返ってきょとん、とした顔をした田中さん。

…あー、もーまたわけわからないことを口走ってしまった。今の忘れてください、って口を開こうとしたら、

「んはっ、マジ？じゃあ…、俺とAちゃんの秘密の場所だ。他の奴には内緒ね？」

教えてくれてありがと。って頭にぽん、と触れて閉まったドア。

突然のことに固まる。……びっくりした

その後１つ、深呼吸して「よしっ。」と気合いを入れ、残りの仕事に取り掛かった。

クタクタで家に着いたのは２２時をまわっていた。

…まぁ、今日もいないよね。

真っ暗な部屋にため息を一つ。