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これが単純に惚れた腫れたといった類の話だと気が付くまで妙に時間がかかった。
気が付いたのはAに彼氏がいるのかどうかが気になって、それが夢に出てきた時だ。
誰かの為に作っていると聞いていた曲の送り主が男なのか女なのかがぼんやりと気になりだした時に丁度夢に出た。
Aが見たことの無い笑顔で誰か隣にいる背の高い男に笑いかけている夢。
途端にじわっと滲み出てきた黒い何かに呑まれた瞬間目が覚めて気がついた。
正直、拍子抜けした。
サンハ兄さんの家に行くのが楽しみな理由が一つ増えて、馬鹿みたいに浮かれながらドアを開ける。
Aは後で帰ってくるから先に入ってていいという言葉にちょっと期待していた。
帰ってきたAのコーヒーを淹れる丁寧な手つきを見て、一緒に料理を作る。家庭を連想させるような小っ恥ずかしいやりとりが気恥ずかしくむず痒い。
俺にはもう縁のないものだと思っていたのに。
それからは飲んだ。嫌という程に。
頭の中では何度もAと名前を呼んでいるのに、現実では一度たりとも口に出来ていない自分の意気地の無さにうんざりする。
最初は共鳴のようなものだと勘違いしていたそれが、蓋を開けてみれば単なる色恋沙汰である薄っぺらさにも、自分の恋愛音痴具合にも飽き飽きしていた。
飲みすぎた、と後悔しながらトイレに行こうとすると、シャワー帰りのAと鉢合わせする。
濡れた髪。あどけないすっぴん。びっくりした顔。どれも可愛くてついつい笑みがこぼれる。いい香りがして、紅色した頬が色っぽくて、自分の妄想なんじゃないかなんて柄にもないことを考えた。
――その匂い、好きだ。
口にしたのかしてないのかは分からない。だけど、Aが何か返事をした気がする。
いつもなら恥ずかしがって言えないことも、酔っ払ってしまえば少しは素直に言える気がした。
好きだ。
多分顔がいい女は他にも居る。でも違う。俺と同じものを持って、同じように世界を見ているのはお前しかいない。
でも、そう思っているのは俺だけなのかもしれない。そう考えると怖かった。
だってこれは一目惚れのようなもので。まだ俺達は何かを深く話したことだってない。
俺の想像の中で膨らんでいくAという存在に、胸の奥が痛くなった。
どうしてこうなった。と自問してみても答えは帰ってこない。
ただ、Aの作る音が綺麗で、静かな生活がどこか羨ましくも切なくて、どこか自分のようで、考えずにはいられない。
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ムルーア(プロフ) - 初めまして💜一気に読んじゃう程話に吸い込まれて胸がギュッとしました😭素敵な作品ありがとうございます🥰 (6月21日 20時) (
レス) id: e97b81299d (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - めーぷるさん» ありがとうございますー！私も雰囲気は気に入ってるので嬉しいです……！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
めーぷる(プロフ) - 大好きです、この作品 (2019年6月25日 14時) (レス) id: eb55ea3859 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - りおさん» ありがとうございます！ 結構淡々とした話だったので、楽しく読んでいただけて嬉しいです！ (2019年6月24日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
りお - とーーーっても面白くて、どんどん読み進めちゃいました！ (2019年6月22日 2時) (レス) id: 189551a3bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年5月1日 16時
