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Aの絵を描く姿が好きだと思った。
日差しが差し込む明るい部屋でヘッドホンをつけたAが鼻歌を歌いながら筆を滑らせている。
静かな部屋に時折響く筆の擦れる音と描くのに夢中になっている後ろ姿の細い肩。
時折足を組み替えたり下ろしたりを繰り返しながら色を乗せていく姿を眺めて、どのくらい経っただろうか。
少し高いパートになると掠れる歌声に忍び笑いを漏らすと、はたと筆が止まる。そして、振り返る。
その表情と瞳が無垢で見入った。
少し残念だと思ったのは、絵を描く後ろ姿をもう少し眺めていたかったから。
でも、振り返った時のあどけない顔と目が合った瞬間の瞳の綺麗さを知ってしまうと、そんな気持ちは掻き消える。
｢邪魔して悪い｣
｢いえ……｣
｢歌、上手いじゃん｣
｢からかわないでください｣
恥ずかしがって俯くその頬にぺたりと張り付いた絵の具がちょっと笑えた。夢中になっていて気が付かないのだろう。
近づいてそっとその頬に触れる。
薄い皮膚と柔らかな肌、指を這わすと受け入れるかのように伏せられる瞳。
乾いて取れないそれを何度か優しく擦っているうちにどことなく甘い雰囲気が流れていた。
｢……拒まないんだな｣
ここはAの部屋で、二人きりで、肌にも触れていて。
そんな状況であるのにも関わらず、Aは長い睫毛を伏せて俺の指を受け入れる。
自分の鼓動が早くなっていることに気がついたのは、Aと俺の間にある見えない薄い膜の中にゆっくりと踏み込もうと覚悟を決めたからだ。
ゆっくりと許しを乞うようにゆるりと指で頬を一撫でする。
｢俺も、期待していいか？｣
声が少しだけ震えたのを勘づかれてしまってもおかしくない距離だった。
俺がお前を好きなように、お前も俺を好きなのだと……そう思い上がってもいいだろうか。
俺がそう乞うかの如くAの目を覗き込むと、その瞳は俺を見つめて微かに潤んだ。赤い頬。
そして僅かにだが確かにこくりと頷かれる。
その瞬間に愛しさが込み上げて、思わず頬に唇を寄せた。柔らかくて温かい頬の感覚を感じる。
｢これも拒まない？｣と何度も尋ねてしまうのは怖さのせいでもあり、こんな土壇場でも捨てきれない邪魔な羞恥心のせいでもある。
｢ユンギさんなら、いいです｣
どうしてAは俺の欲しい言葉を知っているのだろうか。
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ムルーア(プロフ) - 初めまして💜一気に読んじゃう程話に吸い込まれて胸がギュッとしました😭素敵な作品ありがとうございます🥰 (6月21日 20時) (
レス) id: e97b81299d (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - めーぷるさん» ありがとうございますー！私も雰囲気は気に入ってるので嬉しいです……！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
めーぷる(プロフ) - 大好きです、この作品 (2019年6月25日 14時) (レス) id: eb55ea3859 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - りおさん» ありがとうございます！ 結構淡々とした話だったので、楽しく読んでいただけて嬉しいです！ (2019年6月24日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
りお - とーーーっても面白くて、どんどん読み進めちゃいました！ (2019年6月22日 2時) (レス) id: 189551a3bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年5月1日 16時
