〈yoongi〉WHITE… (ページ47)

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練習室に来る前に、みんなはデビュー曲の練習をすると総務の人が言っていたのを思い出す。

今回の曲はあの子が制作に関わっているとかなんとか言われて｢全てを持っているんですね｣なんて感じる薄っぺらい笑いを滲ませながら返したような気がした。

なのに何故、扉の向こうにいる彼女たちは私の曲に合わせて踊っているのだろう。

曲が終わると私は練習室の中へ入っていった。

気まずい沈黙の中で彼女たちは私を見た。

｢どうして、私の曲……｣

――時が止まったような気分だった。

どうしてと詰め寄る私を振り付けの先生が抑えた。

何も知らないと口々に言う女の子の中で、あの子だけが平静に私の顔を眺めていた。

もしかして、と思った時には私は彼女に掴みかかっていて、半狂乱の私を先生が社長の前に無理矢理連れていった。

｢貴女の曲を買うわ。名義ごと｣

社長は私を机の上に押さえ付けさせてそう告げた――

｢――…………本当なんだ｣

スマホを持つ手が震える。

受話器越しに兄のごめんという声が聞こえて思わず涙が込み上げてきた。

あの時、曲も何もかもを練習室に置いて逃げ帰った私を慰めたのはお兄ちゃんだった。

盗作されたと泣く私を抱き締めて、悔しさを分かちあってくれたと思っていた。

昔から音楽をする私の支えは家族だと思っていた。

感情を分かち合うのも理解し合うのも家族だと、そう思っていたのは私だけみたいだ。

――ごめん。悪かった。追い詰められていた。ハンソル兄さんが最初に言い出した。止められなかった。発売する気はなかった。こんなことになるなんて知らなかった。どうしようもなかった。

そう言葉を続ける兄の言葉を、止まらない涙の合間に聞かされる。

仕事が無くなる。訴訟になる。金がなくなる。もうこの家を手放す。地元に帰る。両親には俺から言う。

言葉を時々つかえさせながら兄が言う。私はそれを黙って聞いていた。

何一つ納得も出来なかったけれど、時が止まることはないのだろう。

兄の言ったことはすぐに現実として私の身に降りかかるのだろう。

私はまだ何かを言い続ける兄の言葉を遮ってスマホの電源を切った。